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お金ではなく、生きがいでつながる豊かな社会を目指して

見返りを求めない、相手のためを想う気持ちを互いに贈り合うことによって、感謝が循環する豊かな社会をつくりたい。そんな想いから、一般社団法人givを立ち上げた西山直隆さん。自身の理想を絵空事で終わらせないために仕組みを構築し、地道な活動で利用者を増やしてきた。西山さんが考える豊かさについて、そしてステークホルダーとの関わり合いについて話を伺った。

 

金銭が発生しないサービスのやりとりを促す「giv」、始動

一般社団法人givは、2020年1月22日に「giv」β版をローンチした。

好きなことや特技を必要としている人に贈って、感謝でつながっていく豊かな社会「giv」。ギブをもらった人は、また違う誰かに自分の好きなことや特技を贈ることで、ギブが繋がっていく、ペイフォワードのプラットフォームだ。ギブを受け取る対価として、金銭は発生しない。損得勘定ではなく善意のギブでつながることにより、経済的な豊かさとは異なる精神的な豊かさを感じることができる。

運営するアプリ内で、贈ったギブの記録は、受け取った時の写真とともにプロフィールページに蓄積される。これによりどのメンバーが誰にどのようなギブを送ったか閲覧できるようになるそうだ。

素敵なギブに共感したら、その人にギブを贈ることも可能となる。価値の提供を可視化することで、他の人にギブすればするほど、その人が評価されてギブが返ってくる仕組みだ。

感謝に基づくギブは人と人の間を循環していく。

2019年2月に実証実験を始めた頃から、ギブのジャンルはHealth(健康)、Beauty(美容)、Food(食)、そしてLearning(学び)の4つに設定している。例えば美容師やフィットネストレーナー、農家、英会話講師などが、givのメンバーとして参加中だ。まずは、わかりやすく価値を提供できるスキルを持ったプロフェッショナルたちに参加してもらうことで、ギブの輪を広げていく狙いがある。

ただし、スキルを持っていれば誰でも参加できるわけではない。givのメンバーになるためには、事前登録をしたのちに審査を受け、通過後は説明会に参加する必要がある。そうすることでサービスを無料で受けようとする人を排除し、信頼できるメンバー同士の積極的なギブを促せるのだ。

givの流れ

givには、二つの大きな価値がある。一つは、自分の好きなことや得意なことをギブすることにより、自己表現や自己成長の機会を得られること。そしてもう一つが、感謝し合って人や地域とつながれることだ。

一般社団法人givの代表理事である西山直隆さんは、givが資本主義の弊害を吸収する新たな仕組みとして機能することを期待している。

「givは仕事でもプライベートでもない、サードプレイスになり得ます。お金をもうけるためではなく、自分の好きなことや得意なことを発揮して、人や地域とつながり合える場所です。

メインストリームにはならないかもしれません。しかし、例えばお金が必要な時期は仕事に100%の労力を費やし、時間に余裕があるときにgivへ10%を費やすというように、ライフワークの一つとして機能していくと思います」

自分ができることをギブし、誰かからのギブを受け取る。端的に言えばサービスの物々交換だが、givが目指している世界はそこにとどまらないと西山さんは語る。

 

「ただサービスとサービスを交換するだけではなく、そのなかで感動体験を生み出すことに焦点を当てています。その感動体験は極めて主観的な価値だったりもします。最初に生まれたギブは、農家さんが料理人さんに野菜を送るというものでした。

料理人さんはおいしい野菜に満足し、自分のお店でも出したいから食べに来てくださいと農家さんを招待しました。そして農家さんはお店に行って初めて、自分が作った野菜がどう調理され、どんな人たちが食べているかを目の当たりにしたんです。自分が社会にどんな価値を提供しているか、改めて実感できたんですね。

このような感動体験は、お金に換えられないものです。重たく言えば生きがいで、それを共有し合えるのがgivの仕組みですね」

 

とにかくギブさせてほしいーーメンバーが進んでサービスを提供する理由とは

金銭ではなく信頼をベースとし、サービスを贈り合う。そんなgivを夢物語で終わらせず現実の仕組みにするため、西山さんは2019年2月から1カ月間限定で実証実験を行った。

実験に参加してくれるプロフェッショナルなメンバーを20人ほど集めたが、最初は誰もがgivの仕組みに半信半疑だった。何かもらえるのであればサービスを提供してもいいといった、テイクありきでギブをしようと考える人も多かったという。

しかし、実験期間中に「テイクはもういい。ギブが楽しいから、ギブをどんどんやらせてほしい」と主張する人が相次いだ。一体、何が起きたのだろうか。西山さんは、“健全な負債感”が生じた結果ではないかと推測する。

「ギブする人には、ギブを受け取る相手と直接メッセージのやり取りをしてもらいます。そうすることでただ価値を提供するだけではなく、その人の人となりやギブを受けようと思った理由も知ることができ、お互いをより理解し合えるんですね。

あらゆるものが分業化されている今、サービス提供前にお客様と直接やりとりをする機会は少ないと思います。しかし、ギブする相手の希望や悩みを事前に聞くことで、相手のことを考えながら創意工夫して、最大限ギブしてあげようという気持ちになるんですね。

その結果素晴らしい体験をさせてもらっても、givのシステムでは本来サービスに支払うお金は発生しません。ギブを受け取った人は、そこで健全な負債感がたまるんですね。それを解消するため、自分も誰かにギブしたいと考えるようになるんじゃないかと思います」

そうして1カ月間の実証実験は、好評のうちに終了した。その後システム作りに着手したが、完成までに数カ月を要するため、その間システムを通じたギブは行えない。実験に参加したメンバーたちは、「楽しかったから、ギブを続けたい」と口を揃えた。

そこで西山さんはメンバーを専用のFacebookグループへ招待し、活動を継続してもらうことに。システムがローンチされる前にもかかわらず、日々新たなギブが生み出され続けている。

givのやりとりの例

 

本当の豊かさとは何だろう?資本主義の権化からgivへ行き着くまで

感謝し合い、人と地域が感謝でつながる仕組みであるgivを生み出した西山さんは、以前デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社で働いていた。テクノロジーやイノベーションに携わり、資本主義の権化のような仕事をしていた西山さんは、なぜgivをつくろうと考えたのだろうか。

きっかけとなったのは、海外に滞在した経験だった。

2016年末に会社がアジア拠点を立ち上げることになり、西山さんはシンガポールとインドに滞在した。シンガポールは最先端の技術を積極的に取り入れていたが、インドではそもそもの物理的な社会インフラに課題を抱えるある村がたくさんあった。

両極端ともいえる二つの国での暮らしを体感したときに、どちらの方が幸せなのかは判断できないと考えたのだ。

「インドでは村のみんなが融通し合い、助け合って楽しそうに生活していました。そこにお金を持っている先進国の生活をそのまま当てはめようというのは、何か違うと感じたんです。本当の豊かさとは何か、考え始めました」

豊かさについて考えるなかで、自身が携わってきたテクノロジーやイノベーションにも疑問を持つようになった。

 

「新しいテクノロジーを用いて、世の中をイノベーションしていく。それはすごく重要なことです。一方で、何のためのイノベーションなのかを考えなければいけないと思ったんです。便利なものが広まったあとの人々の生活はどうなるのか。どういう世界を作ると、豊かな社会になるのか。そもそも豊かな社会とはなんだろうか。それを常に考えていましたね」

 

海外へ行く前は日本の良さがわからず、海外と比較して日本が劣っているという認識を持っていた西山さん。しかし、海外の人々と話したり日本について学び直したりするなかで、日本独自の“生きがい”やの考え方が世界でも注目されていることを知った。

物質的ではなく精神的な豊かさを表す、日本の“生きがい”という言葉。ある程度経済成長が進み成熟してきた日本だからこそ、精神的な豊かさについて発信することに意味がある。西山さんは、そう考えたのだ。

 

地道な声かけと口コミで、参加メンバー増加

givの仕組みを思いついた西山さんが会社を辞めると決心したのは、2018年のことだった。givの仕組みはユートピアすぎて、周りにはなかなか理解されなかった。金銭のやり取りが発生しないことでうさんくさいと思われたり、伝え方を間違えて新興宗教のように思われたりしたこともある。

しかし、仕組みをつくると決めた以上、使ってもらうメンバーがいなければならない。美容師やトレーナーといったクリエイティブな仕事をしている知人がいなかった西山さんは、美容院やトレーナーの会合に足を運び、地道に声かけをすることで徐々にメンバーを集めていった。

20人ほど集めて実証実験を行ったあとも参加メンバーは増え続け、システムのローンチ前にもかかわらずメンバーは65人にまで増加した。これだけ増えたのは、参加メンバーの口コミ効果が大きいという。

 

「メンバーがSNSに『物々交換のようなシステムで、髪を切ってもらいました』などと投稿し、それを見て興味を持ってくれた方から問い合わせが来ます。

ギブを経験したメンバーにアンケートを取ると、全員が家族や友人にgivの話をしているんですよ。自分がこれをもらい、こういうものを提供したと、誰かに話したくなるんですね。それを聞いておもしろそうだと感じてくれる方は、非常に多いです」

また、サービスの対価として金銭が発生しないgivを運営するため、活動に賛同し寄付をしてくれるフィロソフィーパートナーと呼ばれる企業は重要な存在だ。このフィロソフィーパートナーも、西山さんが地道に声をかけて集めている。

メンバーが地方へギブしに行くために使う交通の便をサポートしたり、フィットネストレーナーが指導時に使うジムを貸してくれたりと、支援の幅は多岐に渡る。西山さんがかつて勤めていた会社も、フィロソフィーパートナーとなって活動を支援してくれている。

 

すべてのステークホルダーをリスペクトし、フラットな関係をつくる

givは、活動に賛同し協力してくれるステークホルダーが存在しているからこそ成立する仕組みである。だからこそ西山さんは、常に各ステークホルダーへの感謝を忘れない。

まず西山さんは、参加メンバーたちのすごさを語ってくれた。

「ギブできる人は、豊かな人だと思うんですよ。ギブできるということは、人に価値を提供できる能力を手にしている証です。なんとなく敷かれたレールを進むのではなく、自分が信じた道をちゃんと歩んで好きなことをやっているという時点で、誇りがあって素敵だと思います」

 

さらに西山さんは、givの主役はメンバーであると明言している。

「僕は仕組みやシステムづくりのために動き回っていますけど、場をつくっているだけです。一つひとつのギブにはストーリーがあり、それをつくっているのは個々のメンバーです。主人公であるメンバーが、自分たちでストーリーをつくっていく。一人ひとりをそう見ていますし、そのようにコミュニケーションを取っていますね」

 

また、フィロソフィーパートナーである企業も、お金や有形無形のアセットを提供してgivを支えてくれている。givを応援してくれる企業とともに、よりギブしやすい環境を作っていきたいと西山さんは考えている。

そして、givではメンバーのプロフィールを考慮したうえで、コミュニティマネージャーが手動でマッチングを行う。メンバーが安心してギブするためにも、体温が伝わるコミュニケーションが必要だ。コミュニティマネージャーは当初西山さんが一人で担当していたが、現在は専属の女性がおり、彼女への感謝も計り知れない。

あらゆる人に支えられて、givは成立している。西山さんは、givのステークホルダーを“リスペクトしたうえでフラット”だと表現する。

 

「メンバーもフィロソフィーパートナーもコミュニティマネージャーも、誰が上で誰が下というのはありません。見ている方向が一緒の人たちと、楽しいことをしているだけです。だから、みんなをリスペクトしていますが、関係性はフラットだと思っています」

今後もステークホルダーをリスペクトしながら、givを普及していきたい。それが西山さんの想いだ。

 

新たな豊かさを研究し、個人も社会も豊かになる社会をつくる

長くFacebookグループで運用していたgivは、ついに新たなシステムとともに正式なスタートを迎える。西山さんはgivを通じ、GDPとは異なる新たな豊かさの指標を作りたいと考えている。

「研究機関等とも協力しながら、givがどれほど豊かさの提供に寄与しているかを研究していきたい。そうして新しい豊かさの在り方をまとめるとともに、客観的な指標を出していければいいなと思います」

 

また、現在は都市部を主なターゲットとしているが、西山さんは地方に大きな可能性があると考えている。今後は地方でもgivを有効活用できるよう、自治体とも話を進めていくつもりだ。

「特に田舎では助け合いが基本なので、自然とgivのような仕組みができあがっているんですよね。だからこそ、地方が持っている資源や豊かさを、givによって見える化したい。

見える化することで、この場所にはこういう価値観を持った人がいて、自分はここでこんな価値を提供できるとわかるようになる。すると、より助け合いが円滑にできるコミュニティが作られると思います」

 

価値を贈ることで生きがいを感じながら、人や地域とつながる仕組みを目指して。

お金だけに縛られない新たな豊かさの在り方を広めるため、西山さんの挑戦は続く。

 

<プロフィール>

西山直隆

米国ワシントン州公認会計士の資格を取得後、大手コンサルティングファームであるデロイトトーマツグループに入社。ベンチャー企業の成長支援に従事し、当時最年少部長に就任。2016年よりシンガポールに拠点を移し、”日本の技術でアジアの社会問題解決”することをテーマにアジア各国を飛び回る。活動の中で、経済的な成長=人の豊かさ、だけではないと感じ、金銭的な豊かさだけではなく精神的な豊かさが得られる社会の在り方を研究・実践するため2019年に一般社団法人givを設立。

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代表理事 西山 直隆(NISHIYAMA Naotaka)

東京都台東区東上野2-21-3 成宝ビル7F 

メール:info@giv.link