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株式会社トイトマ

有識者VOICE

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株主至上主義からステークホルダー資本主義へ。 持続的に成長・繁栄できる会社の条件とは?

 

 SDGSやESGという観点が世界的な潮流となり、売上や利益などで企業の価値を判断する株主至上主義は大きな転換点を迎えようとしている。自社の利益のみを過度に追及するのではなく、顧客、取引先、社員とその家族、地域社会、株主、さらには未来のステークホルダーといったすべてのステークホルダーの幸せにいかに貢献していくのか。

その責任を自覚し、遂行する企業こそが持続的な成長や繁栄を享受できる「ステークホルダー資本主義」の時代が始まっている。

企業が各ステークホルダーとどう向き合い、どういった信頼・評価・共感を得ているのか。ステークホルダー資本主義をどのように根付かせていくのか。GURULIではその一歩踏み出すべく、今回、有識者の声を伝えるコーナー「有識者VOICE」を立ち上げた。その第一弾として、さまざまなステークホルダーと丁寧な関係を紡ぎながら事業を展開している株式会社トイトマ代表の山中哲男さんに話を聞いた。

 

トイトマとは?

構想やアイデアなどを具現化し、事業創造していくための基礎となる関係構築から始まり、事業プラン、事業スキームなどを創り上げる事業創造コンサルティング会社です。顧客には、官公庁や大手企業などが多数あります。代表の山中さんは、著書に『立上力』、『あったらいいなを実現するビジネスのつくり方』があり、2015ワールド・アライアンス・フォーラム事務局長 /U3A国際会議2016実行委員などの国際会議なども務めています。

要約図

「誠実さ」をベースに、ステークホルダーに貢献する

 ―持続可能な会社には、各ステークホルダーとの信頼関係が欠かせません。まずは、山中さんがそれぞれのステークホルダーとどのように向き合い、信頼関係を築いているのかを伺わせてください。

山中 10年以上経営をしていますが、どのステークホルダーに対しても守り続けているのが「誠実であること」です。会社とはサービスをつくって提供するものですから、ステークホルダーでも最も重視するのは顧客です。

ぼくらの仕事は事業創造領域のプロデュースやコンサルティングですから、顧客や関わる全ての企業との関係性をしっかり築き、誠実に仕事ができるように守っているのがそれぞれの顧客に合った契約書をきっちり作ること、プロジェクトがどう動くかわからない時は1か月契約の自動更新にすることです。

コンサルの契約は通常年間契約なんですね、長期の契約にした方が収益は見込めますから。ですが、相性が合わない顧客やプロジェクトはさまざまな問題が起きがちです。相性がよくなく、物事を進めるリズムやスピード感がずれてしまうと、先方は「お金払っている」、こちらは「やっている」という中で互いに不満をもつようになって、パフォーマンスにも影響します。次にもつながらない。

1か月更新ならどちらからも気軽に断ることができますので、先方にオファーした事業にコミットする余裕がないなど、今は自分たちの出番ではないと感じた時に「1回契約を切りましょうか」と申し出ることもできます。

 

―年間契約と1か月契約では契約金額も大きく違いますよね。経営の安定を考えると年間契約を死守したい会社は多いと思います。

 

山中 ぼくらの業界で顧客に対して誠実に向き合うということは、関係構築が出来た上で、サービスを提供できる環境を提供すること、これに尽きます。

違和感や不満がある中で仕事をするのはお互いにストレスとなります。そこから発展的な関係が築かれることはあまりないですから。1か月契約は顧客に対する貢献になります。

 

―次に、取引先というステークホルダーへの向き合い方や方針についても聞かせてください。

山中 さまざまな立場の会社や人と仕事を行う事業開発系のプロジェクトでは、取引先の人とも仲間といっていいようなポジションで関わることが多く、口約束や口頭ベースになってしまいがちです。言った・言わない、にならないよう、その都度言語化し、お金、役割、契約をぼくらがきちんとマネージメントし、ひとつひとつクリアにしながら誠実に行うことを守っています。

特に関わる人が多いプロジェクトでは、契約のスキームもフィーのスキームも複雑になりやすいので、どのタイミングで入ってもらうか、いついくらお金が発生するか、仮のものでもスケジューリングをすることが大切。この原則を守っているからこそ、いい関係性を深められます。

また、互いについての理解を深め、それぞれができること・苦手なことをきちんと判断することも大切です。取引先が苦手なことはこちらが巻き取るなど、フォローアップは欠かしません。

 

―原則をきちんと貫くことで信頼関係を持続し、深めることができると。社員やその家族に対しては、どのような方針ですか。

山中 社員という最も身近なステークホルダーに対しては、フレキシブルで働きやすい環境とともに、そのときの感性を尊重し、それぞれが興味のあることにコミットできる環境も整えています。会社の業務以外のプロジェクトに参加するのもウエルカム。人は自らの関心が高まった時がアクセルを踏むタイミングですから。

そこで出会ったものを社内に持ち帰ってもらい、「面白い人がいたので紹介したい」「この企業を手伝ったら面白いプロジェクトが始まりそう」などの提案からネットワークが広がったり、新しい展開につながったりすることも多くあります。

1つのことを突き詰める良さもありますが、自分たちの会社自体が多岐にわたる業種の企業や行政と関わるので、ふり幅をより大きく様々な経験できる機会は積極的に取り入れていきます。

 

―関心のあることに積極的に携われるのは、働く立場としてはとてもうれしい貢献です。

 

山中 「週末に遠方のイベントに参加したいので金曜から休みたい」などもOKです。今、働き方改革が進められていますが、ぼくらは昔から年中フレックスで自由。カフェや家で仕事するリモートワークも当たり前です。

人が生き生きと働き、生きるためには自らの意思やそのときの感性と向き合いながら、選択肢を見いだし自ら選択していくことが必要ですから、仕事もプライベートも分ける必要がない。社内にはネガティブな雰囲気はまったくないです。

 

―顧客・取引先・社員と直接的なステークホルダーについて伺いましたが、金融機関や株主、地域社会との向き合い方や貢献についても聞かせてください。

山中 ぼくらは兵庫県から出てきているので、メインバンクは今も地元の播州信用金庫で、メガバンクはサブ利用しています。起業当初からのご縁を大切にしたいという想いからですが、借入金が一切ないので、おつきあいする金融機関を検討する必要がなかったんです。

コンサルティングはものづくりと異なり、大きな資金は必要ないですから投資を募ったこともなく、トイトマの株主は会長の自分と社長だけです。

地域社会について考える時、収益を還元することでの貢献はあまり意識していないんです。ぼくらの強みはプロジェクトを0から創造し、つくりあげる力なので、何かを動かしたり、生み出たしたりすることで社会に還元していこう、という考えです。ご縁のあった社会的な団体や組織の困りごとのボールを積極的にとっていく、という感じですね。

たとえばエイジコンサーン・ジャパンという高齢社会に貢献する活動を行うNPOが世界大会を行う時、お金がない、マンパワーが不足しているという課題がありました。そこでプランニングや協賛企業を募ることから始まり、大会の運営までを無報酬で行いました。

各省庁の若手官僚などが集まる交流勉強会「官民連携推進Lab」の運営も行っています。今、社会課題が複雑化・高度化する中、省庁や官と民との壁を越えて解決することが求められています。そのために課題解決を高度化していく仕組みづくりを目的とする会ですが、これまでに官庁のさまざまなプロジェクトに関わって得た知見を活かしながら無報酬で行っています。

ただ、一般的な報酬にあたるお金はもらっていませんが、これらをサポートすることで、ここでしか得れない経験や繋がり、気づきを貰っています。これも立派な報酬であると社内では認識しています。

 

まっとうな顧客第一主義こそが企業の価値を決める

―今、世界的にSDGSやESGが企業価値の評価指標となり株主重視の経済活動から持続可能な企業活動への転換が求められています。ですが、日本の企業はそのトレンドは読んでいてもどう向き合えばいいのかわかっていないように見受けられます。それについてはどうお考えでしょうか。

山中 ぼくはSDGSやESGという概念自体にはあまり興味がないんです。会社を経営する者として持続可能な会社にすることを考えるのは当たり前ですから、SDGSやESGに則った目標値を定めなくてはならないという意識があまりない。社員や取引先、顧客に対していかに誠実に向き合うか、この人たちとこの先10年・20年つきあい続けるためにどうすればいいのかを考え、実践していけば結果そうなると考えています。

不誠実にやっていたら持続できませんから。同様に、SDGSやESGの言葉がピンとこない人がいるなら、自分が誠実にできているのかを考えるのがいちばんの近道だと思います。あまりむずかしく考えなくてもいいと思う。

 

―キーワードに振り回されない方がいいということですね。

 

山中 ただ、企業に対しては、「利益の質は大切に」と言いたいですね。どういうことかと言うと、ズルを働いたり、騙して利益をあげている会社というものが存在します。そういう場合、会社や社員、取引先がグルになっているので、彼らの関係性自体は悪くないんです。そして、関係性がいいことに自分もまわりもだまされてしまう。

ですから、そのプロダクトやサービスを見た時に顧客に対して誠実であるかどうかがいちばん大切なことであり、企業の価値を決めるものだということを頭に刻んでおくべき。顧客に誠実であることがどんな場合でもファーストセレクトです。次に、出た利益を社員や取引先にきちんと還元しているかが判断のポイントです。

 

―ステークホルダーの中でもまず顧客がいちばんに来るということですね。

 

山中 「お客様は神様」ではなく、本来の意味の顧客第一主義です。企業はサービスを提供して利益をあげるものですから。顧客、取引先、社員の順番で誠実な関係を築いているか。その次に社会に対して何ができているか。そういう企業活動を株主さんが共感し、応援してくれる。それが全方位のステークホルダーといい関係を築いている会社だと思います。

そうした企業や経営者が増えていけば、社会に求められる会社が変わっていき、顧客が裏切られたり、不誠実な会社に大企業や行政が発注したりすることがなくなります。SDGSやESGも達成し、社会も変わっていきます。

 

■持続的に利益を生み出す「サーキュラー・エコノミー」の時代へ

―ステークホルダーの評価を可視化することができれば、そういう会社が増えると思います。そこにGURULIも貢献したいと考えます。どうすればステークホルダーとの関係性を大切にする会社をこの国に増やしていけると考えますか?

山中 やり方はいくつかありますね。例えば、企業経営者や組織運営に携わる人々が意思をもって経営と向き合うことは重要だと思います。意思をもたず、組織を舵取りしないと、1つ1つの細かなところに目がいかず、わかりやすい数字にばかり目がいきがちです。そうなると、自社の成長や売上規模を追ってしまいます。

これではどれだけ努力しても、社会的価値を生み出す組織にはなれないし、今までの資本主義社会と変わらない。意思はいつしかその組織のアイデンティティとなり、1つのブランドが生み出されるはずです。そうすると、そこで働きたい、そこと協業したい、そのサービスを活用したいと、関わりたくなる組織となり、自然と発展していくと考えます。

小さなことでも、意思をもって決めた自分たちのこだわりポイントを可視化できると面白いですね。そういった1つ1つに共感が生まれるはずです。

他には、すでにある資源などを活用し、利益を生み出すビジネスモデルであるサーキュラー・エコノミーのビジネスモデルを企業が導入する道筋をつくること。持続的に利益を生み出す文脈と、その事業モデルを世の中に浸透させていくことです。

というのは、先ほどお話したようにズルをしても儲けたい人、儲けている人がいます。その人たちがサーキュラー・エコノミーのビジネスモデルに則って事業活動を行えば、このモデル自体が社会貢献ですから、必然的に社会に寄与する事業になります。サーキュラー・エコノミーのマーケットは現状まだまだ手付かずなので、利益をしっかり出せる可能性がある。そこにこれから事業展開を考えている人もズルをしていた人たちも参画したくなるような情報発信の仕方や、投資していく仕組みを考えています。

 

―なるほど、ブルーオーシャンであることに気づかせて、社会に貢献できるビジネスモデルに参画させる作戦ですね。サーキュラー・エコノミーですが、具体的な事例はありますか?

 

山中 トヨタ自動車がすでにやっています。4・5年以上前からもはや車を多く売ることから価値変動がおきて、販売台数だけでは社会価値を高めることに繋がらないことをわかっており、車を何万台も売ることからシェアリングするモデルへと舵を切っています。要するに、指標が大きく変わっていくことを意味しています。

あるものを持続的に使うビジネスでは利用率がカギになるので、車の稼働率を現在の5%くらいから50%へとあげられるよう、AIを活用した管理システムやサービスを作ろうとしている国もあります。もちろん生産をやめるわけではありませんが、シェアリングのマーケットができるタイミングでプラットフォームを用意できるよう、ビジネスモデルを世の中に提言していくことに力を入れています。そういう企業はこれからどんどん登場するでしょうね。

 

―様々な分野で、シェアリング要素の強いサービスがどんどん立ち上がっていくということですね。企業にとっては自らの領域でその可能性を探ること、持続的な企業活動を行うモチベーションをどう持ち続けるかがポイントになりそうですね。何かアイデアはありますか。

 

山中 同じ志をもつ経営者たちが定期的に顔を合わせられるよう、出入り自由な場所があるといいですね。ステークホルダーを大切にする会社のための会員制バーなどがいいと思います。人との出会いから物事が始まり、動き出すことは非常に多いです。だからこそ出会いをつくる場づくりがもっと必要と感じています。実践する人がいれば、ぼくらも協力していきたい。

再度お伝えしておきたいのは、1個人や1企業の成長ではなく、社会発展、社会課題への取り組みたい、既に取り組んでいるというビジョンをもつ人々が集まっても、結局人と人のつながりからチームは成り立ち、物事は動いていきますから、そこでもやはり誠実な関係をいかに築くかがベースとなり、大切なポイントになります。今の社会は本当に複雑になっており、1人では解決することは非常に困難な状況だとみています。

なので、違ったスキルもっていたり、違った領域で活動されている人とタッグを組むことが必要なります。これまでそうした関係性を意識してこなかった人は、始めから大きな視点で物事をみるより、会社などの組織よりももっと小さな単位、数人の集まりで自分をどう活用していくか。そういう視点をもつことから始めてはどうでしょうか。自分が今いる環境でどう自分を活かし、人と関わっていくか。そこから社会への働きかけの手がかりも生まれてくると思います。

 

―ありがとうございました。

 

<プロフィール>

山中 哲男(やまなか てつお)

1982年兵庫県生まれ。高校卒業後大手電機メーカーに就職する。約1年間働くが、やりがいをもつことができず転職を試みるものの、失敗の連続。自分で仕事をつくることを決意し、飲食店を開業。“ゆったりくつろげる空間”をコンセプトにした居酒屋を展開し繁盛店にする。その後、米国ハワイ州でコンサルティング会社を設立しCEOに就任。日本企業の海外進出支援、M&A仲介、事業開発支援を行う。丸亀製麺ハワイ店など人気店を多数支援。翌年、株式会社インプレスを設立し、代表取締役社長に就任。ビジョンや想いに共感するものに携わり、現在まで50以上のプロジェクトを立ち上げる。既存事業の事業戦略策定や実行アドバイス、新規事業開発支援を中心に活動中。著書に『立上力』、『あったらいいなを実現するビジネスのつくり方』がある。2015ワールド・アライアンス・フォーラム事務局長 /U3A国際会議2016実行委員

 

 

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