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個を尊重する令和の働き方改革。企業に求められていることとは?

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2019年4月1日から働き方改革関連法が施行されたことを受け、多くの企業が変革の必要に迫られている。ただ、その変革というのは、時短やテレワークの推進、ワーカーの多様性に合わせて福利厚生を充実させるといったレベルで終わってよいものではない。

令和の働き方改革で重要なキーワードとなるのが、企業のステークホルダーの中でももっとも重要な従業員の“個の尊重”だ。企業各社には、ワーカー個人をもっと大切にした組織づくりを行っていくことが求められている。

それでは、企業はどのような点を意識しながら働き方改革を推進すれば良いのだろうか?

そのヒントを探るべく、総務省行政評価局総務課長であり、仕事以外でも自発的に働き方改革推進に向けて活動する箕浦龍一さんにお話を伺った。

 

個人が幸せに働ける組織づくりを目指す

―令和の働き方改革として、まず企業各社は何を意識する必要があるのでしょうか?

令和は個人が組織に合わせるのではなく、組織が個人に合わせていく時代です。そのため経営者は今後、ワーカーとの関係性をますます意識しなければなりません。

ネット社会の浸透により、人と人とのつながり方が多様化しています。それにより、やる気のあるワーカーは今まで以上のパフォーマンスを発揮できるようになりました。

かつて仕事は自社のネットワーク内でのみ行われていましたが、現在ではWebを通じて同じ志を持った他社ワーカーやフリーランスの仲間とつながることができます。会社に所属しながらも、会社のブランドに頼らず自分というブランドをもってプロジェクトに参加し、世の中に価値提供する人が増えているのです。

志を持ったワーカーは、会社を評価する際に給料のみを重視しているわけではありません。自分が社会に価値を提供するための舞台として、所属している会社がふさわしいかどうかを見ているのです。価値提供の際に妨げとなる制約を課している会社は、ワーカーにとって魅力がありません。令和の世の中でいまだにリモートワークやパラレルワークを制限しているような前時代的な会社からは、ワーカーが去ってしまうのです。

キャリアの選択肢が広がっている今の時代は、企業は、ワーカーにとって、そこに所属して価値を発揮することがプラスであると感じてもらえる存在であり続けられるかどうかが重要です。令和の働き方改革では、組織と人との関係性が劇的に変化しているという事実を受け止め、個人に合わせることができる企業へと変化していくことが求められます。

 

―ワーカーは本質的に世の中に価値を提供したいがために働くから、企業はそれを妨げてはいけないということですね。

 

その通りです。働き方改革は、ワーカーが会社の仕事を通じて自分の価値を高め、それによって幸せを感じられるようになることを目指して行うべきものです。重要なのは、ワーカーが本当に幸せを感じて仕事をしているかどうかです。昔から経営の世界ではES(従業員満足度)という概念がありますが、果たしてすべての経営者がその本当の意味を理解していたでしょうか。

人は誰かに何かしてあげたとき、「ありがとう」と感謝されることで喜びを感じます。そして労働は、仕事を通じて世の中に価値提供した結果として、感謝や金銭といった対価をもらうものです。これが働くことの本質だとすれば、人は労働に喜びを感じ取ることができるはずです。

しかし、僕たちは実際に働いている中で、幸せを感じることができているでしょうか。やりがいや処遇など何に喜びを感じるかは人それぞれですが、いずれにせよ働くことが幸せだと思えていないワーカーは多いと思います。時代の変化に合わせて組織のマインドセットが変わっていないために、組織や仕事との関わり方が見えず、戸惑うワーカーが増えていると感じます。

だからこそ、働き方改革ではワーカーが幸せを感じながら働ける組織づくりを目指す必要があるのです。

 

―多くの企業では、大胆な働き方改革をする必要性がありそうですね。

はい。テレワークを導入するかどうかというレベルで終わるのではなく、組織文化そのものを大きく変えていくことが求められます。日本の企業には、組織のマインドセットを変えて人を育てる組織にしていくことにもう少し目を向けてほしいです。

伝統的な日本の組織文化は、若いワーカーを中心に、受け入れられないものになってきています。現に古い体質を継続している役所や大企業は、早期離職や採用難などの問題に直面しています。例えばある省庁では、入省して20年以内の若手官僚が1年間に23人も大量離職しました。働くことの本質を真面目に考えている若者たちの目には、伝統的な日本の組織文化は魅力がないものとして映っているのです。

優秀な学生たちは、国家公務員の総合職を志望しなくなってきています。さらに、難関試験を突破して採用されたとしても、前述のとおり辞めてしまう。このままでは、いずれ公務の担い手がいなくなってしまう危険性もあります。これは役所だけでなく、古い体質を継続している大企業にも同じことがいえます。そのため令和では、伝統的な組織文化を大きく変える働き方改革が必要なのです。

 

―現在進められている働き方改革について、懸念点はありますか?

 

働き方改革によって時間外労働の上限規制が設けられたのは、ややもすると若者にとって不幸なことになりかねないと危惧しています。なぜかというと、労働時間の短縮は人材育成の機会の縮小につながりかねないからです。

昔のワーカーは、新しい組織に入ると、残業してでも勉強して仕事を覚えることで、キャッチアップ、スキルアップをしていました。しかし、今後は時間外労働の制限が厳しく課されますので、こういう手段が取りにくい。仕事に関係する外部の研修会やセミナーに参加する余裕もなくなるなど、自己研鑽の時間が取りにくくなっていくのでは、と思います。上司や先輩も、かつては本人の成長に応じて、成長がみられる職員には少し難しい仕事を任せるなど、業務を通じての丁寧な指導も可能でしたが、それも、時間の制約が厳しい中では難しくなる。昔は会社がスキルアップの面倒を見てくれていましたが、今後は完全に自力でやらなければならないのです。そうなると、組織と個人との関係はますます希薄化してしまう。そのため、組織には若い人に成長のチャンスを与え、きちんと育つ環境をつくることが求められます。この点は、ワーカー自身も自覚しなくてはなりません。

 

総務省でもプライベートでも働き方改革を促す

―箕浦さんは、ワーケーション・アライアンス・ジャパン(以下、WAJ)の設立にも関わったと伺いました。WAJの設立経緯について教えていただけますか?

 

僕は、ひょんなことから長野県軽井沢市の「リゾートテレワーク」のプロジェクトに関わることになりましたが、そのご縁で、その後、長野県以外の地方自治体とも関わる機会がありました。ワーケーションに興味を持っている地方自治体が多いと感じたのです。休暇を兼ねつつ全国各地でテレワークができるワーケーションは、ワーカーの柔軟な働き方を認めるとともに地域活性化につながることから、期待が寄せられています。

時を同じくして、いち早くワーケーションを展開していた和歌山県に出向していた総務省の後輩が、ワーケーションの全国展開を進めるために自治体間連合を設立しましょうと提案してくれたのです。そこで、和歌山県と長野県が中心となって全国の自治体に働きかけWAJを立ち上げるのを、水面下でサポートさせていただきました。

 

―WAJの今後の具体的な活動内容をお聞かせください。

 

WAJは、ワーケーションを展開していこうとする自治体の情報交換や連携・協働のためのプラットフォームだと考えています。全国各地でワーケーション誘致や啓発のためのイベントを展開したり、東京や名古屋、大阪、福岡などの大都市圏では、ワーケーション受入地域のPRを含めたエキスポを開催するようなこともやっていきたい。ワーケーションに興味がある企業や個人の方と自治体をつなぎ、それぞれの土地の魅力を発信していく場としていくことが考えられます。

残念ながら、今は、全国的に新型コロナウイルス感染症の影響で身動きがとりにくい状況ではありますが、終焉後のいわゆる「アフターコロナ」に向けて、今回、リモートワークを実際に体験した多くの国民の皆さんが、ワーケーションという新しいライフスタイル・ワークスタイルを生かしながら、全国の様々な地域とつながりを持っていただけるような展開を、今後も考えていきたいと考えています。

また、総務省としての仕事ではなく僕個人の活動になりますが、全国にあるワーケーション可能な宿泊施設やワークスペースの情報を一元化するプラットフォームを作りたいと考えています。滞在日数や人数、予算などを指定すると全国各地の施設が表示されるようなWebサイトがあれば、もっとワーケーションも普及するのではないかと思います。

 

 

―箕浦さんがプライベートの時間を使って総務省外の活動も行うのはなぜですか?

 

やりたいことがたくさんあるというのもありますが、今の日本の状況を何とかしたいという想いが強いからです。

もちろん本業である総務省の仕事でも、長らく組織文化が変わっていない古い組織を調査し、必要に応じて勧告することで働き方改革を推進していきます。その一方で、プライベートの時間でも企業の働き方改革を促すためにできることがあれば、積極的に行いたいと考えています。

役所は制約が多い環境なので、仕事以外の活動を積極的に行う人はそう多くありません。しかし、優秀で発信力があり、社会を良くしたいと願い、自分の頭で考えて行動できる人は公務員にも数多く存在します。僕は、あらゆる活動に参加しながらも公務員として働いているというロールモデルを増やしたいと考えています。そうすることで世の中の公務員に対する見方も変わりますし、公務員の活動の幅が広がり世の中に提供できる価値も増えていくと思います。

 

公務員の働き方改革と今後の社会の可能性

―公務員の世界でも、先進的な民間企業のように大胆な働き方改革を進めていけるでしょうか?

 

むしろ、進めていくしかないと思います。公務員が机の上にある与えられた仕事で手一杯という状態では世の中のためにならないので、働き方を大きく変える必要があると感じています。

僕たち公務員は、与えられた仕事だけに忠誠を尽くすべきではありません。本来は国家国民のために、忠誠を尽くさなければならないのです。だからこそ、自分が今担当している仕事だけでなく、日本の将来も見据える必要があります。

おそらく、国家公務員の総合職を志望して入省した官僚たちは、当初は世の中のためにこんな仕事がしたいという強い想いを抱いていたはずなのです。しかし、目の前の仕事に忙殺されるうちに、中にはやる気が削がれていってしまう人がでてくる。そのため、ワーカーが与えられた仕事と国家国民のため自発的にやりたいと思える仕事の両方に取り組める組織をつくることが、役所が行うべき働き方改革です。

 

―役所の働き方改革として、具体的に考えている施策はありますか?

今はまだ提案しても受け入れてもらえない状態ですが、僕が個人的に考えているのは省内兼業の仕組みです。公務員は税金から給料をいただいているので、容易に民間企業と兼業することはできません。

しかし、ワーカーがやりたいことを省庁のプロジェクトとして提案し、大臣まで決裁を取った場合、週の勤務時間の5分の1はそのプロジェクトに充てていいという仕組みをつくれば、公務員の世界でも社内兼業は十分できるはずです。

現在は、人的リソース不足のために諦めているプロジェクトが部局内に埋もれているのではないかと思います。当初は誰もが高い志を持って入省しているのでそれぞれが国家国民のためにやりたいことを考えていますが、結局忙しくてできないからと諦めてしまっていることも多いはずです。省内兼業の仕組みを取り入れることができれば、与えられた仕事だけでなく自分が進んでやりたい仕事にも携わることが可能になります。

役所は前例のない挑戦を躊躇しがちなので、組織全体で何かにチャレンジすることを推奨する環境をつくる必要があると感じています。パラレルキャリアとまではいかなくても、もっと外に出て挑戦することをワーカーに勧めるべきです。

 

―働き方改革が進められる令和の世の中では、どのような社会がつくられていくと思いますか?

 

お金ではなく、人が中心の社会になっていくことは間違いないでしょう。今まではお金で測れる価値が手っ取り早くて重要だと考えられていましたが、それだけが価値ではないと気付く人がどんどん増えています。

誰かに価値を提供するという労働の本質こそ重要だとして、周囲に価値提供できる企業が尊ばれていく。同様に、周囲に価値提供できるワーカーを評価する軸が会社にもできていくかもしれません。だからこそ、組織は個人が最大限に価値を生み出せるよう、働き方改革によって環境を整える必要があると思います。

 

ユニリーバ・ジャパン株式会社の島田由香さん

ユニリーバという企業を詳しく知っている訳ではないですが、人事の島田さんとは何度かお話をしたことがあります。彼女と話していると、世の中をこうしたいという明確なビジョンが伝わってきます。パワフルだし、周りの人を幸せにしている魅力ある方ですね。

ステークホルダーとの信頼関係というお話ですが、これは法人だけではなく、個人も同じですよね。関わる人(ステークホルダー)とどういった向き合い方をしているのか。信頼関係をどう築いているのか。その個人の連なりが法人にも繋がるという観点から見ると、彼女であれば今回の個を尊重する働き方改革といったテーマでも、また違った話を聞くことができるのではないかと思います。

 

<プロフィール>

箕浦 龍一

総務省 行政評価局 総務課長 

平成 3 年 4 月 総理府採用

平成11 年 3 月   総務庁人事局企画調整課課長補佐

平成13 年 4月   内閣官房行政改革推進事務局公務員制度等改革推進室

平成14年5月 総務省行政管理局副管理官

平成18 年1月 内閣官房行政改革推進事務局公務員制度等改革推進室

平成18 年10月 総務省行政管理局企画調整課企画官

平成20年9月 総務大臣秘書官

平成21年9月 総務省行政管理局調査官(行政情報システム企画課)

平成22年 7月 同 行政管理局管理官

平成24年 9月   内閣官房内閣参事官(内閣総務官室)

平成27年 7月   行政管理局行政管理局 企画調整課長

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