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くじらキャピタル株式会社

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くじらキャピタルの目指す「素敵な会社で埋め尽くされた世界」とは⁉

バイアウトファンドとして、中小企業をターゲットに経営の立て直しを行っているくじらキャピタル株式会社。同社が経営理念に掲げているのが、「世界を、素敵な会社で埋め尽くす」だ。その意味と狙いとは何なのか、代表取締役社長 竹内真二さんに話を聴いた。

 

くじらキャピタルとは?

―まず、くじらキャピタルさんは何をしている会社か教えてもらえますか?

当社はバイアウトファンドの運営会社です。バイアウトファンドとは、対象会社の過半数株式を取得して経営権を持たせて頂き、業績を回復させたのちに次のオーナーにお渡しする、という仕事です。

僕らの特徴は、中堅・中小企業を投資対象にしていることです。中小企業は日本企業の99.7%を占めていますが、中には業績がふるわず、経営者も社員も苦労されていて、そのしわ寄せが取引先や地域社会にまで及んでいる会社がたくさんあります。

自分自身、赤字経営を続けていた会社に経営者として入って立て直したこともありますし、その会社を次のオーナーに渡したらまたすぐに経営が傾いてしまった経験をしています。その経験から、「会社とは、経営者次第で社員だけでなく、取引先や地域社会に至るまで影響を及ぼす存在なのだ」と痛感しました。だから、ファンドの立場から中小企業の経営支援を行うことが、日本の経済を元気にする手段であり、経済人としてのつとめだと思ったのです。

 

―なぜ中小企業をターゲットにしようと思われたのでしょうか?

 

一般的に、投資ファンドは売上規模が数百億円から一千億円以上あるような大手企業しか相手にしない傾向があります。規模の経済が働きやすいファンドの性質上、どうしても効率的に大きなリターンを得ようと思うと大手企業を相手にする方がいい。大手企業に投資するのも中小企業に投資するのも、かかる工数はさほど変わらないので、投資するのであれば大手企業のほうが「うまみ」がありますから。

でも、僕たちはあえて中小企業を投資対象に選んでいます。というのは、僕はもともと外資系金融機関の出身で、その時のクライアントは国を代表するような大企業ばかりでしたが、よく考えてみればそうした大企業って日本の全法人のたった0.1~0.3%ほどしかないんです。

日本企業は諸説ありますが380万社ほどあると言われていて、そのうち上場している3,600社程度に過ぎず、ほとんどが中小企業。

圧倒的多数を占める中小企業の再成長に手をつけない限りは日本に眠る経営資源が無駄にされてしまう。そうなると、マクロ経済としても成長しないし、結果としてだれも幸せになれない。ここに対して、誰も救いの手を差し伸べていなかったことに無自覚ではいれませんでした。

 

―中堅中小を対象にしようと思い立ったうえで、組成したくじらキャピタルさんのミッションは何ですか?

2つあって、1つは「デジタルを使って停滞している会社の再成長を実現すること」です。僕が以前社長として経営再建に関わっていた国内最大規模のデジタルマーケティングの会社で、経営をしながらデジタルのことを学んできました。

これからの令和の時代、デジタルの知見なくして事業を再成長させることは不可能だと思っています。なので、デジタルを使って顧客接点領域からオペレーション、バックオフィスに至るまで一気通貫でデジタル変革を成し遂げ、投資した会社がその属する業界において圧倒的なデジタル・ディスラプターに生まれ変わることで経営再建を目指そうとするのが当社の特徴のひとつです。

 

もう1つの特徴は、「リストラを絶対しないこと」です。一般的な投資ファンドは、手っ取り早くコストカットしてリターンを得るための手段として、社員のリストラに踏み込む傾向があります。でも、僕らはそういう形でのバリューアップは一切せず、社員を全員残したまま再成長を実現し、ステークホルダー全員をハッピーにする資本を目指しているのです。

 

―リストラをしないと宣言するのは、ハンズオン型の投資ファンドの性質上、短期でのバリューアップが見込めないことを宣言しているようで、自らの首を絞めるような行いにも見えますが、それを信条とするに至る経緯を教えてください。

 

かつて再建に取り組んだ会社において実施したリストラへの痛切な反省に基づくものです。その時は社員10数名のリストラを断行しました。対象者の中には様々な家庭の事情を抱えている人も含まれていて、せめてもの想いで退職金を多めに支払い、再就職支援も行ったのですが、それで得たのは残った社員達の疑心暗鬼しかなく、長期間にわたってそのネガティブな空気を払拭することができなかったのです。「次は誰がクビになる番なのか」「竹内は血も涙もない男だ」という声が僕の耳にも漏れ聞こえてきました。

それで利益率が改善したかというと、決してそうではなく、リストラによる利益改善効果はほとんどありませんでした。

むしろ、その後、逆に人を増やして収支管理を徹底したことで収益が劇的に改善するという皮肉。リストラをするのではなく、人を残したまま業務を根底から変える方がはるかに価値を生み出せるのだと実感し、あの時苦痛を引き受けてくれた人たちに一生顔向けができないと思いました。リストラは、僕が描く経営再建の形とは全く相いれないことを痛感したのです。

 

―そもそも、竹内さんはなぜファンドを立ち上げようと考えたのでしょうか?

 

もともと「バイアウトファンドやりたい」と思ったのは大学生の頃です。世界初のレバレッジバイアウト(LBO)を成功させたコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)というバイアウトファンドがあるのですが、その創業者3名のうち2名が僕の通っていたアメリカの大学の卒業生で、その1人であるヘンリー・クラビスの講演をおそらく1995年か1996年にキャンパスで聴いたとき「こんな世界があるのか!」と衝撃を受けたのが最初です。

当時好きだった「ウォール街」(1987年)や「プリティ・ウーマン」(1990年)といった映画にもバイアウトファンドの世界が幾分ロマンティック描かれていて、「自分もこんな世界に入ってみたい」と思い、大学卒業後、リーマン・ブラザーズの投資銀行本部に入社し、ずっとM&A助言をやっていました。

 

そこから紆余曲折を経て、2012年より、その時点で4期連続の赤字に苦しんでいた上場企業の経営を立て直すために社長に就任します。自分自身も全財産を投じて経営再建を行った結果、無事に業績も回復し、2016年にあるグローバルファームに売却しました。2018年にリテンションの期間が終わり、この後何をしようかと考えた時に、「企業の経営再建に関わるなら、今後はファンドの形で行いたい」と思ったんです。それがくじらキャピタルを立ち上げた理由ですね。

 

くじらキャピタルのステークホルダーとは?

―最近では、ステークホルダーとの関わり方を、投資の判断基準とする投資家も増えていると聞きます。投資をしてもらう立場として、ステークホルダーとどのように関わっているのか教えてください。まず、社員の方とはどのようにお付き合いをされているのでしょうか?

とっつきにくい、ちょっと怖い社長と思っているんじゃないですかね(笑)。でも、できないことはできない、わからないことはわからないとはっきり言いますし、僕もいっぱいミスするので批判するのも全然OKというスタンスで日々接しています。社員には一切隠しごとはせず、基本的にすべてオープンにするようにしています。隠そうとしてもすぐわかってしまうので。

それはお金のことでも同じです。たとえば、取引銀行のオンラインバンキングのIDやパスワードも社員全員に共有していて、全員が閲覧権限を持っています。もちろん振込はできないですよ(笑)。なので、キャッシュフローがどうなっているのか、今会社にお金がいくらあるか、何にどれだけ経費がかかっているかとか、全部オープンにしています。

ミーティングでも、あえて何も加工していないデータを見せています。一見、デメリットが多いように捉えられますが、何事も隠さなくていいから、かえってラクですよ。

 

―社員のみなさんとは、とてもフランクな関係でいらっしゃるんですね。では、顧客との関係はいかがでしょうか?

僕たちのお客様は、単純に言うと投資家です。LP投資家からお金を預かって、預かったお金の一部を管理報酬としていただいて、リターンが上がれば何割か我々の成功報酬を引いてお返しするという構造です。基本的に投資家のお金で食べさせて頂いているので、僕たちのお客様は間違いなくLP投資家です。

でも、「本当の意味でのお客様って誰だろう?」と考えたら、実は投資家だけではなく、我々が投資をする先も入るのでは、思うんですよね。もちろん厳密にいえば、投資先は投資の「対象」であってお客様ではない訳ですが、僕らが一番長く携わって、長くお付き合いするのは投資先の会社であり、その社員な訳です。

投資先の再建をして業績が上向けば、おのずと周りの人たちも、僕にお金を預けてくれた投資家も次に投資先の会社を買ってくれる未来のオーナーの方もみんなハッピーにできるので、投資先の会社も大事なお客様だと僕は思っています。

 

―では取引先はどこになりますか?

取引先が誰になるかっていうのも難しいんですよね。第一義的には、会計士や税理士、弁護士、M&Aアドバイザー、経営コンサル、ローンをつけてくれる銀行といった、僕らに投資先を紹介してくれたり、取引実行をお手伝いしてくれる人が取引先になります。

ただ、それに加え、僕は僕らに会社を売ってくれたオーナー様も大事な取引先だと思うんですよね。「ハッピーリタイアをしたいけど、次に事業を託す人はやっぱり慎重に選びたい」「社員が幸せに働き続けられる環境を構築してくれる人に来てほしい」という想いを持って、僕らと話をしてくれるオーナーも非常に大事です。

 

―地域社会とはどのようにお付き合いをされていこうと思われますか?

社員の方々たちが永くその仕事を続けていけるよう会社を伸ばして、ひいては地場産業を活性化し、会社のある地域社会をまるごと良くしていきたいと思いますね。

以前、ある小売店への投資を検討していたときに、似たような小売店を別のファンドが買収したのを目の当たりにしたのですが、そのファンドは一部ハイエンドのブランドは国内の有名な産地で作っているんですが、それ以外の商品は海外で作っていながら、そちらも国内生産であるかのように誤認させる売り方をしていた。メイド・イン・国内の有名な産地、とつけたいがためにその土地に申し訳程度のオペレーションを残すだけじゃ、地元の人のためにならないし、素敵な会社も地域も作れないなと。地域で信頼を得るためには、地域の方を雇用して地域でモノづくりをすることで、地場産業を盛り上げられるような仕組みにしていかなければと思いますね。

 

―そうやって会社を取り巻くステークホルダーの人たちを幸せにしながら、素敵な会社をたくさん増やすにはどうすればよいのでしょうか。

まず大事なのは、ちゃんと儲けて利益を出すこと。僕の解釈では、利益っていうのはこの会社を続けていいよっていう世の中からのメッセージなんですよ。だから、赤字になるっていうことは、その会社は社会にあまり必要とされてないから続けるべきではないという意味だと思うんですよね。だからまず利益を出さなきゃいけない。

 

問題はその利益の出し方です。利益を出した上で、来年も再来年もずっと仕事を続けられるようにしなければならない。もし、業務を進める中で、搾取されたり、無理に無理を重ねてしわ寄せを押し付けられたりして、その地域の中で嫌な思いをする人がいたら、続かない。当たり前ですよね。だれかの犠牲のもとに事業を続けていたら、最初はがまんしていても、どこかで逃げられちゃいますし、邪魔をされることもあるかもしれません。

そういうことはあってはならないので、利益を出しながらも、社員やその家族をはじめ、取引先、地域の方が「この会社がずっとこのまま続いてほしいな」って思える会社を作っていきたいですね。

 

 

<プロフィール>

竹内 真二(たけうち しんじ)

リーマン・ブラザーズ、モルガン・スタンレーなどを経て、2012年に実質1号となるファンドを設立。同年4期連続最終赤字に陥っていた上場デジタルマーケティング会社の代表に自ら就任し、非上場化と経営再建を行う。無事に成功をおさめ、2018年2月に同社の代表を退任し、同年4月くじらキャピタルを創業、代表取締役に就任。以後現職。