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金融資本主義の限界を乗り越え「共感資本社会」を創ろう 【新井和宏代表】

 

20世紀以降、イデオロギーの覇者となって世界秩序を作ってきた資本主義が、今内側からシステム崩壊を始めている。金融資本が暴走し、富が富を生み出す仕組みに組み変わった資本主義はマネーゲームの道具となって、世界中で貧富の格差を増大させつつある。しかも、貧しい側はさることながら、富める側も共に幸せになれないという悲しい現実が剥き出しになってきた。

 

では、この皆が幸せになれない金融資本主義社会を乗り越える解決策はあるのか?この問いに応えられる革新的なチャンレンジの一つが「共感資本社会」を創ることだ。

 

鎌倉投信のファンドマネージャーを経て金融資本の問題を熟知する、あの新井さんが株式会社eumoを起業し、いよいよ本格的に動きはじめた。

(本稿は、3月9日に開催された第1回 Eudaimonia Forum 2019~共感資本社会の実現を「共に考える」をもとに、「共感資本社会」が初めての方にもわかるように編集したものです)

 

 

金融資本主義では人は幸せになれない

 

新井さんが提唱する「共感資本社会」を理解する前ふりとして、まずざっくりと資本主義社会の出来事を振り返ってみよう。資本主義の発達プロセスについては諸説あるところだが、まだ18世紀中ごろでは、資本家が富を形成することは国民全体の福利につながるものでもあるとして、好意的に評価されていた。

 

ただ、自由な経済活動を手放しで推奨したかに思われている、アダム・スミスでさえ「国富論」と対になっている「道徳感情論」の中で、人は感情と行為の適切性を評価する能力を持っていると考えていた。自身の胸中の公平な観察者の視線を意識しながら行動することにより、資本主義は制御できるものであると。

 

しかし今日、進化する資本主義が生み出した金融テクノロジーは、数々の投資スキームや金融商品を生み出し、デジタル技術のイノベーションと相まって実態経済とはかけ離れ、金融資本主義と言うマネーゲームの世界を生み出したのだ。

 

マネーゲームのプレイヤーからすれば、お金は会社を支配する万能のツールとなる。この金融資本の膨張によって投資家=株主の力はますます強くなってきた。結果、資本市場がお金の効率性によって動きROEの高い企業がもてはやされるようになった。

 

 

確かに、お金は万人にわかりやすい価値の指標だ。ほとんどのものと交換でき、貯蔵でき、多ければ多いほど力を持つがゆえに、それ自体を追い求めたくなる魅力を持っている。お金の多寡が社会的な序列にもなり、保有資産ランキングも、年収ランキングもできる。上位にランキングされることで自身の承認欲求も満たされることになる。定量評価ができるランキングができると人はランキングの上に行きたくなるものだ。

 

 

新井さんは、鎌倉投信時代に8,000社の企業を訪問する中で、業績の良い企業を見てまわったとき、高収益を上げている大企業で高い給料をもらっている社員が必ずしも幸せでないことに気付く。「お金を求めて競争する結果、いつの間にかお金に使われる人が増えてしまった」と新井さんは言う。

 

 

人々が幸せになれる共感資本とは何か?

 

確かに、金融資本主義の暴走の揺り戻しは起こっている。年金基金などの長期で資産を増やさないといけない投資家が企業の社会的価値向上やサステナビリティを重視するようになり、企業はESGを意識するようになってきた。だが、これも既存の金融資本の枠組みにおけるお金の中での解釈の変化に過ぎず、人の幸せには直結しない。

 

新井さんは「例えば日本円というお金は実は、何の裏付けもない。円は、お金だと思うからお金だし、お金だと思わなければお金ではない。円は皆が価値があると思うから、通貨として成立している」とそもそものお金の問題を指摘する。

 

しかし、円という物差しで評価すると、同じ種類の農作物で同じ大きさならば同じ価格が付く。ところが一方は無農薬で手間ひまをかけて作られていて、一方は農薬をふんだんに使って作ったものと知ったらどうか。消費者は手間をかけて大切に育てられた方により高い金額を払いたくなるものだ。

 

人は円で評価するものがすべての価値ではないし、お金にならないもののほうがむしろ大切だと思っている。だから、手間をかけた生産者を応援したい、高い額を払いたいという気持ちになる。買い手が、手間をかけた良い商品を生み出す売り手のファンになり、喜んでそこにお金を支払う。あなたの提供するサービスは素晴らしい価値があるのだからもっと払いたいと考える。

 

それが共感であり、共感できるものに価値を見出すのが「共感資本」なのだ。まじめにやればやるほど、利益を圧迫し苦しくなるという円で評価するのではなく、努力が正当に表れる共感で評価をする。人が大切だと思っているものが大切にできる社会、これが「共感資本社会」だ。新井さんは、こういった世界観を提唱する。しかし、本当にそんな社会が創れるのだろうか?

 

実は共感はすでにある。そのすでにあるものを価値として可視化し、流通させ、それによって人々が食べていける仕組みが重要なのだ。お金を求めて競争する社会から、共感によってわくわくしながら、皆が皆を支える社会をどう創るか?そこで、新井さんは、共感を可視化する新しいプラットフォームとしての「地域通貨eumoポイント」を生み出した。

 

「お金は人間が定義したものであって、再定義をすればよいのです。お金の奴隷になりつつある状態から人々を解放するのがeumoのミッションだ」と新井さんは言う。

 

 

見えない価値「共感資本」からなる社会をどう創るのか?

 

eumoの事業構造:株式会社eumoは共感資本主義社会を創るために、人間力を高める人財育成、いい会社に投資する投資事業、共感の見える化を行うプラットフォーム、地域通貨事業を行う。

 

共感資本社会を創るためには、そもそも人間の幸福とは何なのかを掘り下げる必要がある。この会社の社名「eumo」とは、古代ギリシャ語のユーダイモニアEudaimonia(持続的幸福)から取った言葉なのだが、ユーダイモニアというのはどういった状態なのか?

 

ユーダイモニアはヘドニアHedonia(感覚的幸福)と対になっている。ヘドニアは五感を刺激する心地よさ、承認欲求などを表し、持続しない幸福を意味する。対してユーダイモニアとは自己実現や生きがいを通じて得られる幸福境涯のことで、内的欲求、天命に従う生き方を実現していくことだ。

 

つまり、お金を求めるのはへドニアの世界で、どこまでいっても満足することがない。お金持ちになりすぎて品性のない買い物を続ける人のお金の使い方を見ればそれはわかるだろう。人の幸せには本当はユーダイモニアが必要なのだ。

 

しかし、それを感じとれるようになるためには人間としての成長が必要となる。そもそも人間とは人の間と書く。社会とは人と人で成り立っている関係の総体で、一番大切なものは人と人との関係性だ。共感し合える関係性自体を増やしていくことで人間としての成長が促されていき、ユーダイモニアが理解できるようになる。

 

成長していく人が社会関係資本への参画度を増し、形が見えていくほどに共感資本社会が広まっていく。つまりその成長プロセスが共感資本社会の形成過程だとも言える。

 

「価値を可視化し、価値を創出すると、そこにエネルギーが発生し、人の流れができる。共感に基づく社会関係資本が厚くなっていくほどに、素晴らしい社会になっていく。この共感のネットワークに参画することによって人々の生きがい、持続的幸福も生まれてくるのだ」と新井さんは言う。

 

 

人の成長無くして、持続的幸福はない~eumoが行う人財育成

 

 

新井さんは、真の幸福が感じられるように成長するには美意識と人間力を高めることが必要だという。鎌倉投信時代に訪問した8,000社の企業の中には、美意識と人間力の高い「いい会社」が少なからず存在する。

 

その一つである伊那食品では、社員が通勤する車の止め方一つとっても他社と違うそうだ。この会社では車を前向きに止めたとき、後ろのバンパーが横一線に並んでいるという。何を以て美しい、尊いと判断するか?それは会社全体、社員一人一人が「何が美しいか」を理解し実践しているかどうかによる。

 

彼らは経営者が指示命令するまでもなく自発的に考え行動に移している。それによって働いている人も心地良いし、その会社と関係を持っている人たちも心地良くなるのだ。

 

伊那食品の社是は、いたってシンプル。「いい会社をつくりましょう」だ。その中で社是を実現するための社員の心がけとして「ファミリーとしての意識をもち、公私にわたって常に助け合おう。創意、熱意、誠意の三意をもって、いい製品といいサービスを提供しよう。すべてに人間性に富んだ気配りをしよう。公徳心をもち社会にとって常に有益な人間であるように努めよう」と、人間力を高める続けることを宣言し、実行している。

 

とは言え、こういった人間力といった定性的なものを我々はどのように、自己評価し改善し、高めればよいのだろうか?そこには、科学的な指標による評価、改善プログラムが必要となってくる。

 

そこで、今回eumoでは成人の発達段階と、幸福度を定量化し測定する「en(仮称)」というアプリを作った。このアプリは、ユーダイモニア研究所が生み出したユーダイモニアの定量化ロジックを実践に移すものだ。

 

こういった、ツールを活用しながらeumoでは2019年4月からeumoアカデミーを始め、人間力の育成を始める計画だ。そしてこのeumoアカデミーは、次の投資事業とも密接に連携している。

 

 

共感資本を集め分配する~eumoが行う投資

 

eumoの出資者には会社の理念「共感資本主義社会の実現を目指す」にコミットし、それを実現するために協力してもらっている。eumoの投資家は会社を支配する投資家ではなく、対等なステークホルダーとしてともに活動する人たちだ。よって、どんなに多くお金をだそうが議決権は一人一票(出資者Aの場合)なのだ。

 

それでは資金が集まらないのでは?という人もいたが、実際には集まっている。なぜなら、この共感資本社会の実現可能性への期待が大きいからだ。eumoの資本金は現在1億円で、2019年度には5億円規模まで増やすことを計画している。

 

さて、eumoに投資するためには投資契約書を交わす必要がある。eumoの理念に対し、あなたは何をしますか?の箇所を空欄にしていて、ここに自分が何をするかを記入しコミットメントする。2019年6月25日に株主総会があり、ここでどれだけ行動したのかを発表することになっている。

 

素晴らしいと思えば称賛されるし、実行していなければ議決権が要りませんよねという話になる。eumoの活動はステークホルダー全員にとって自分事となっており、全員一生懸命何とかしようと活動に参画しているのだ。

 

一方、第一勧業信用組合などのパートナーとともに集めた共感資本は、投融資として「いい会社」に分配されていく。投融資先の会社に義務付けるのは、役員社員、全員がeumoアカデミーの教育プログラムを受けることだ。そこで人間性と美意識を高めてもらい、さらなるいい会社になってもらう。

 

そして投融資先に報告を求める成績表は、社員自身の精神発達段階、幸福度を測定する「en(仮称)」アプリで評価した数値を会社全体でまとめたものだ。これによって共感資本社会に参画するいい会社を増やして行く。

 

 

共感資本社会のプラットフォームとして地域通貨を発行~使わないと腐る、人に会いに行かないともらえない「eumoポイント」

 

新井さんが、再定義した共感資本社会を創るプラットフォームとしてのお金とはいったいどういったものなのか?

 

例えば、仮想通貨もお金を再定義するものの一つだ。ただ、ほとんどがテクノロジーで儲けることだけに利用していて、社会のためになっていない。そもそも仮想通貨はより多くの人が利用することで価値が上がる仕組みになっているので、とにかく広げようとするベクトルがある。

 

新井さんはそれとは逆に、その地域だけで利用できる、あえて面倒な通貨を流通させ、地域経済に役立つことを考えている。これが、地域通貨「eumoポイント」を使ったeumo事業のプラットフォームだ。

 

具体的にeumoポイントでは社会関係資本の可視化のために以下のようなお金の定義がされている。

 

1.期限があるお金

貯めるおかねではなく、使うお金。命があり、使わないと腐るお金

 

2.行かないと使えないお金

Webで決済できない、現地に行かないと使えない面倒なお金。これにより共感性を高めたい人が行動する。

 

3.色がついたお金

これは、生産者を守ることが目的だ。無農薬で心を込めて作った白菜であっても、色形が同じであれば、同じ値段になる。だから本当にいいものは身内にしか配らない。それは市場が信頼できないことを意味する。一方、eumoポイントはお金に色を付けることができ、どれくらい共感してくれる人からの購入なのかがわかるようになっている。

 

4.出会うと増えるお金

新井さん自身、過去に8,000社を訪問する中、素晴らしい人に出会うことによって人間力が高まっていくことを実体験した。そこで、いい人と出会うことによってポイントがもらえる仕組みにしたのだ。これでお金はあくまでも脇役であって目的にならないことが理解できるだろう。「現地に行って、その人といっしょに写真をとってアップロードするとポイントがたまる。簡単に言うと、リアルポケモンGOだ」と新井さんは言う。

 

人は人と出会うことでしか成長しない。EC決済で人に出会わず済ませる世界に人の成長はないのだ。

 

5.eumoでなければ買えない商品があるお金

eumoポイントでしか買えないものを今10か所で開発している。一例をあげると、京都の宮津にある飯尾醸造の本物の醸造酢だ。この会社は有機無農薬で50年作り続けている棚田からとれる米から出来た酒から、酒粕を取り、そこから醸造された赤酢などを造っている。そして今回はリンゴ酢だ。この原料には「奇跡のリンゴ」の木村さんが創ったリンゴのみを使っている。

 

さて、お客様が飯尾醸造の製造直売の店に入る時、数ある商品の中で、リンゴ酢だけがeumo〇〇ポイントといった価格表示がついている。それを見たお客様はどう反応するか?

 

お客様:このリンゴ酢が欲しいのだがeumoって何?

店員:共感のお金です。

お客様:共感のお金って?どうやったら手に入るんだい?

店員:人と出会うともらえます。

お客様:どいうこと??

店員:私と写真を撮るともらえます。

お客様:???

 

こういったやりとりを通してはじめて共感とお金が繋がり、お金の概念が変わる衝撃が味わえるというわけだ。新井さんは、共感資本社会を創るためにこういった「面倒な」仕掛けをふんだんに用意している。

 

新井さんが構想する、人財育成、投資、プラットフォームの3つの連動による共感資本社会の創造に共感された方、面白いと思った方は、第2回 Eudaimonia Forum 2019に是非参加してみてください。

 

 

<プロフィール>

 新井和宏さん

1968年生まれ。東京理科大学卒。1992年住友信託銀行(現三井住友信託銀行)入社、2000年バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現ブラックロック・ジャパン)入社。公的年金などを中心に多岐にわたる運用業務に従事。2007年~2008年、大病とリーマン・ショックをきっかけにそれまで信奉してきた金融工学、数式に則った投資、金融市場のあり方に疑問を持つようになる。2008年11月、鎌倉投信株式会社を創業。2010年3月より運用を開始した投資信託「結い2101」の運用責任者として活躍(個人投資家約19000人、純資産総額約360億円(2018年5月時点))。2018年9月13日株式会社eumoを設立。

 

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