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自動ドアメーカーが感染症対策のなぜ?と日本自動ドアのステークホルダーの話

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いまコロナ禍を受けて世界中のあらゆる産業セクターで大きなハードシップに直面しているが、自動ドアメーカーの「日本自動ドア株式会社」の長年の取り組みが注目されている。同社は古くから感染症対策に取り組んできたという。同社の社会性や公器性とは?

【企業概要】

日本自動ドア株式会社は、共助の精神の下、あらゆるステークホルダーとの信頼関係を大切にしている企業です。会社に関係する全てのステークホルダーに感謝し価値を提供し続ける同社の姿は、ステークホルダー資本主義の体現者とも言えるかもしれません。各ステークホルダーに対する想いとこれからの企業が目指すべき姿について、代表取締役社長である吉原二郎さんにお話を伺いました。

吉原二郎さん

コロナ 消毒作業のケーススタディで見えること

企業の本質を見極めるためには、各ステークホルダーとどういった信頼関係を結んでいるかを紐解くアプローチが最も実相に近づけるのではないか。この問いの下、今回は日本自動ドア株式会社を詳らかにしていきます。

最初にコロナ禍の渦中にあげられた吉原さん(社長)のFBの投稿を引用することから始めたいと思います。投稿はコロナ禍を受けて社内で行われたディスカッションの内容についてのもの。自社の営業所でコロナ感染者がでてしまった場合の対応を話し合ったものです。仮にこの先感染者がでた場合、保健所が消毒作業をしてくれるわけではないので、社員の誰かが消毒作業を行わなくてはならない。でも誰がやるのか。社命や辞令で何とかなる話ではないので、非常に難しい問題を話し合っているものです。以下吉原さんのFBの投稿より。

“オンライン会議で対策チームのメンバーと話していて、皆が当たり前のように手を上げてくれました。その献身的で、私利私欲のない姿勢に心を打たれました。素晴らしい社員と一緒に仕事ができて、私は幸せです。「自分は独身だから自分に任せてください」という人もいました。「基礎疾患のある人は重症になりやすいので、健康な自分に行かせてほしい」という人もいました。 

人の命は、家族がいるから重いとか、独身だから軽いということはなく、病んでいるから重いとか、健康だから軽いといったこともない。人の命は平等であり、命の重さを比較するのは間違っているよね、というディスカッションもしました。最終的には組織図の順番通りで行うことに決めました。 

病床が一杯になった今、医師たちは、より切実な命の選別を強いられていると思います。

私たちは大事な哲学を問われていて、ここを間違うと、のちのち悔やんでも悔やみきれないことになるでしょう。後悔しないように、最善を尽くして賢明な判断をしていきたいと思います。“

FBの投稿より

手を挙げた一人ひとりの胸中を慮ると、日本自動ドアがどういった会社かが見えてきます。様々な感情が交錯しながらも最終判断として、自らの身を挺してでも守りたい場所があると言い切れる強さと、共助の精神が組織内に根付いている証とも言えるエピソードから、一人ひとりにとってディスカッションの場が「いい会社」だと再確認し合えた瞬間となったことが推察されます。

人類の歴史は感染症との共生の歴史とも言えます。聖武天皇が墾田永年私財法(743年)の勅を発布した背景には天然痘の蔓延があり、それが公家社会から武家社会への移行を齎すことになり、明治維新の背景にも、安政5年のコレラの大流行がペリー艦隊の船員による異人が齎した疫病として、市井の民たちの攘夷思想を広めた遠因と言われています。えてして歴史の転換点の裏側には天然痘やペスト、コレラなどのウイルスの蔓延があるもので、今回のコロナ禍に関しても、新しい社会形態に円滑に移行できるかどうか私たちの叡智が問われていると言えます。同時にこうした機会だからこそ共助を発揮し、強くなっていく組織があることは歴史を紐解けば事例は枚挙に暇がありません。

ステークホルダーメディアでは日本自動ドアもまたそうした一社なのだと考えています。以下の吉原さんへのインタビューからも、読者もその可能性を拾うことができるはずです。

 

インタビュー 自動ドアの3つの価値

―日本自動ドアの事業内容、及び社会への貢献の在り方は?

当社は社名のとおり、自動ドアの製造販売保守をメインとしています。コンビニエンスストアや飲食店の多くで「JAD」というロゴの入った自動ドアを目にしていただいている方もいると思います。そもそも、自動ドアは日常生活の中に溶け込んでいるので、社会にどのように貢献しているのかを考えた時、多くの方はただ便利な存在と感じるだけでしょう。

当社の特長は自動ドアを売って取り付けて直してというのを1社完結で展開していることですが、この場では技術的な特長よりも、当社が自動ドアの社会的な価値についてどう考え、お客様に価値を提供しているのかをお話したい。

日本自動ドア株式会社さんのロゴ。自動ドアを注視していくと、町のいたる所で目にするロゴだと気づきます。

当社が自社製品の自動ドアに込める思想には、便利というだけでなく、更に3つの価値「バリアフリー・省エネ・感染症対策」を発揮するものと認識し、日々改善に努めています。

自動ドアのバリアフリーとしての価値を考慮する際、地球上には多種多様な人がいることに思いを馳せなければいけません。私は先代社長が倒れて会社を引き継いだとき、自動ドアの価値を再確認する機会を持ちました。以前、インターネット上で「自動ドアは必要なのか」という議論がありました。

 

―いつごろのことですか?

20年くらい前だと思います。普通にブログか何かの投稿だったのですが、「自動ドアなんて必要なのかな」と書いた人がいたんです。そのころちょうど先代社長が倒れて。バブル経済が崩壊した後だったので、当社の業績も落ちていました。

私としては、これからは社会的にも評価されることをしていかないと、商売が成り立たない危機感がありました。もしかしたら、私自身、自動ドアが本当に必要なのかの迷いがどこかにあったのかもしれません。そのときに、ネット上で先述した自動ドア不要論を目にしました。

でも、その投稿に猛烈に反論していた人たちがいて、それが障がい者の方々だったんですよね。車椅子の方々が、要は「あなたのような健常者に、私たちの気持ちはわからないでしょう」とおっしゃっていたんです。はっとしました。それから私はいろいろな障がい者団体の人に話を聞いてまわりました。

実は車椅子に乗っていても健康な人もいるし、動きも自由に取れる人もいる。ただ単に歩けないだけの人もいる。でも、完全に下半身が麻痺している方や脊髄を損傷している方は、車椅子に座っていてもドアの開閉の動作ができない。手がドアのノブまで届かないので、ドアが開けられない、という話をたくさん聞きました。だから絶対に自動ドアは必要なんだという声をたくさん。あの議論を目にしなかったら、確証が持てなかったです。確かに、健康な人から見れば、別に自動ドアがなくても、あってもなくてもあまり変わらないわけですから。

 

―多くの障がい者団体の方の話を聞くことで、自動ドアは絶対に必要なものという確証を持つことができたんですね。

ドアを開けて建物に出入りするという行為は、人が生きていく上で日常的に避けられないものです。だからこそ、誰もが不自由を感じることなく、自力で開閉する必要のない自動ドアはバリアフリーとして大きな役割があるのです。

 

―御社の製品の特徴で、そういう思いや考えが現れている部分は?

あります。バリアフリーを謳うからには、自動で通れるだけではなく、いかなる人がいかなる理由をもってしても、ケガしない安全性をどう担保するかという点も重要です。この点の追求では当社は他社に先行している自負があります。

日本自動ドアでは、2010年に挟まっても痛くないようにと、風船が割れないほど軽いタッチの自動ドアを開発しました。自動ドアを動かすモーターに必須とされていた減速機を取り払い、モーター自体をダイレクトに回す機構を採用することで、軽いタッチの自動ドアを実現したのです。

特に人通りが多く挟まる危険性が高い駅の中にある店舗などには、当社の軽いタッチの自動ドアが採用されています。一般的な減速機付きモーターを搭載している自動ドアは、電源が落ちると重くて、簡単には開けられません。しかし、この自動ドアは軽いタッチで動かせます。停電になっても、手でカラカラと開けることが可能です。災害時にも役に立つので、今でも毎月200台ぐらい売れているヒット商品として、多くのお客様に選んでいただいています。

 

―どういうシーン、場所で活用されているものなんですか?

人通りが多くて、挟まる可能性が高い、駅の中の店舗などです。具体的には駅中などで多店舗展開されているヘアサロンチェーンで多数ご利用いただいています。その店舗づくりを手がけている設計士の先生が「これは安全性が高いね」と評価してくださって。もうひとつは、全国で店舗展開されている大手のお弁当チェーン店などが、その製品を指定してくださっています。

 

―それが減速機のないもの?

はい。今は改良を重ねて、80kgくらいまでのドアを動かせるようになったので、普通の店舗でも使えます。

 

―その製品が発売された時期は?

2010年くらいだったと思います。電源を落としても手でカラカラと開けられるんですよね。かなり軽いので。災害時に停電になった場合、自動ドアは重かったんです。それが子供でも開けられるくらい軽いタッチなので。普通の減速機付きモーターは簡単には開けられないんです。今でも安全性を求められる場所にはその商品を推薦しています。

 

―この商品自体は、パテントがある?他社でも似たような機構のものはない?

特許も出しています。当社が提携して販売する独占販売期間が切れたので、いちおう他社も買えるようにはなっていますけど。

 

―業界に先駆けてということは言えるものだったと。御社の場合だと、こういう製品開発は、どのように行われるのですか?

いろいろな事故などを集計しています。子供が挟まったとか、高齢者がドアにぶつかったといったデータを全て集計し、原因を分析して製品開発に生かしています。基本的に当社は全部自社で作って売って直してとやっているので、そうしたデータを取得できるのです。エンドユーザーから人がぶつかって動かなくなった、といった理由などで修理に行ったりするので。そうした統計から安全性や効率を高めようとか、スピードをコントロールしようという課題を開発側にフィードバックします。

毎月コンセプトレビューという会議があって、各コンセプトをまずきちんとデータから吸い上げて固めていきましょうと。コンセプトが社会から必要とされているのかの是非をレビューするんです。それで必要性の高い順位からモノを開発・改良していくという手法をとっています。

 

―そうすると今、コンセプトレビューの中で、近未来の自動ドアとなると、どういう話があるのでしょうか?

近未来は、今私たちが研究に取り組んでいることなのですが、自動ドアがデジタルサイネージ化していきます。自動ドアのガラスの面積を活かします。看板って地震の際、落下して人が怪我をする危険性がありますよね。また、街の景観、美観的にもよろしくない。ヨーロッパ諸国をはじめ、世界の潮流として看板は減少傾向です。でも、広告は必要なので、デジタルサイネージ化が薦められている。機器を街中に設置する手もあるけれど、自動ドアは人が出入りして一番目に入るところですから、そのドアの面積を活かせば、町の景観が保たれながら、より広告効果の高い媒体にもなるでしょう。電源を入れているときだけ表示されれば、街の景観としても良いですよね。

 

―何年後にそういう製品が?

いまでもお金をかければできます。でもそれだとなかなか採算ベースに乗っていかないので、今は小さなタブレットタイプのデジタルサイネージからやりはじめているんです。最終的に自動ドアそのものがデジタルサイネージになるのは、あと3年くらいじゃないかな。

 

―じゃあ、もうあと3年くらいで、街中の風景が。けっこう変わりますよね?

そうですね。

 

自動ドアは省エネ?

―2つ目の省エネについてですが、自動ドアが省エネに繋がるとイメージしづらい方も多いかもしれません。

そうですね。実際のところ、自動ドアは非常に省エネな製品です。僅かな電気でモーターを動かすことができ、あとは慣性の法則に従って動くので、あまり電気を使いません。電気代は一般的なエントランス設置のドアでも1日1円程度で、24時間稼働しているコンビニエンスストアでも、1日5円ほどしかかかっていないんです。

2011年に東日本大震災が発生したあと、自動ドアの電源を切って省エネしましょうという動きがありました。この点、反省しています。自動ドアがエコな製品であることをもっと社会に認知させていなければいけなかった。電源を落とし自動ドアを開けっ放しにしてお店を営業すると、開け放したドアからエアコンのエネルギーが30%〜50%ほど逃げてしまうのです。

月に10,000円の電気代がかかるお店であれば、ドアから3,000円〜5,000円分のエネルギーが逃げていってしまうのと同義です。つまり年間36,000円〜60,000円も無駄になってしまうのです。どんなに自動ドアを動かしても、せいぜい年間1,800円程度ですから、動かした方が省エネになります。こうした事実を多くの方に知ってもらいたいですね。

 

自動ドアが感染症対策?

―バリアフリーになる上、省エネにもつながる。いよいよ、本日の主題の「感染症対策」という点ですね。今のコロナ禍では非常に重要ですよね。

はい。当社はドア業界の中でも、長いことウイルスや細菌について研究してきた会社です。多くの人が触って汚染されたドアノブを触る必要がないので、そもそも自動ドアは感染症予防に大きく貢献しているという前提があります。長年自動ドアの社会的責任として感染症対策に貢献したいと考えてきました。

そこで数年前に、ある病院の協力のもと実験を行ったのです。病院内の全てのドアノブに付着したウイルス・細菌を調べたんです。

結果として、ドアノブの汚染は想定以上にひどく、重大な感染源となっていることを確認しました。手で触れない自動ドアは感染症予防に有効であると必要性を説いているのですが、悲しい話、現実問題として予算の都合上、ありとあらゆる場所に自動ドアを設置することは不可能です。ただ、感染症対策を一丁目一番地と位置付ける当社の責任として、そこで終わってはならないだろうと、除菌スプレーを自社開発し、販売しています。

当社の除菌スプレーは、感染症に効果があると考えられているダチョウの卵の殻と精製水でできています。目や口に入っても、問題がなく、皮膚を傷める心配もありません。なんでダチョウなのかというと、ダチョウは鳥じゃないですか。インフルエンザはもともと鳥由来のものです。

日本自動ドアの除菌スプレー

でもダチョウは、鳥インフルエンザに罹りにくい鳥と言われているんです。抗体免疫をもっているらしく、非常に感染症に強いと言われています。そのダチョウの卵の研究者もいるほどで、化粧水にしたり、マスクに利用したり、様々な研究がされています。はっきりとした結論は出ていませんが、ただ、感染症に効果があるのではないかと。

我々はダチョウの卵を粉々にして、1000℃で燃焼して白い結晶にするんです。それを精製水で溶かしています。製品を研究所に送って、ウイルスでいかに殺菌力があるかの研究を委託してずっとやっていたんです。それで97%くらい、ウイルスや細菌を殺すことができると結果がでています。

ウイルスや細菌は目に見えないので、日本社会全般として感染症対策にあまりお金をかけませんでした。しかし、コロナウイルスの流行により感染症対策が急務となりました。自動ドアによる触らない感染症対策を促すとともに、スプレーの販売で除菌を推奨しています。

バリアフリー・省エネ・感染症対策。これら3つに重点を置いて今までやってきましたし、これからもやっていきます。

 

 

日本自動ドアの各ステークホルダーとの向き合い方

自動ドアメーカーがなぜ感染症対策を、という点が判明したところで、次に日本自動ドアという会社の存在意義や公器性をもう一段掘り下げたいと思います。企業を知るには各ステークホルダーとどういった信頼関係を結んでいるのかを詳らかにすることが一番、という観点からステークホルダーを大切にする企業としての日本自動ドアの実像を詳らかにしていきます。

 

社員や社員の家族について

―日頃面と向かって感謝を伝える機会もないと思いますが、日本自動ドアにとって社員の存在とは?

社員には日ごろ感謝を伝える機会は確かにあまりありませんね。本当、うちで働いてくれてありがとうございます、という感謝が全てです。私の務めとしては、社員がやりがいを持って働ける環境を用意することです。

 

―社員に言われて心に残っている言葉は?

その問いを投げられて思い浮かべたのは、以前、ある支店に勤めていたエンジニアの話です。お客様であるクリニックの自動ドアの工事をしていたとき、通りかかった老夫婦が「ここ自動ドアになるんだ。良かったね」と話しているのを聞いたそうです。その夫婦はもしかしたら、今まで手動でドアを開けるのが大変だったのかもしれません。自動ドアになることを喜ぶ声を直に聞いてすごく嬉しかったと、そのエンジニアの日報に書かれていました。

それを読んだ私も、社員が自社の存在意義を再確認できた一コマとしてとても嬉しくなりました。エンドユーザーである通行者の言葉を、我々はなかなか聞けませんから。私はその日報を印刷して、何年か持ち歩いていましたよ。

 

―日本自動ドアならではの社内制度や福利厚生は?

社員が幸せに暮らせるようにという観点で7〜8年前から子どもが生まれた社員にマタニティボックスを贈るようになりました。後におもちゃになりそうなバスの形をした箱にベビー用品を入れて贈っているのですが、おかげさまでなかなか好評です。

人生の大きな出来事を皆で一緒に喜ぶことは、とても大切なことです。企業として日頃の感謝の気持ちを込めているのはもちろんですが、命を育む喜びを社員全員で共有することが私が思い描く企業のあるべき姿だと思います。

 

―御社は確か社内恋愛から結婚したカップルが多いんですよね?

ええ。22組くらいかな。

 

―社員数から考えると本当に多いですよね(笑)。

多いですよね。

 

―それはとても素敵なことだと思うんですよね。会社が出会いに貢献しているわけですから。

私もそうだと思います。ただ、今は社会の風潮が変わったので、そうした男女関係には踏み込まないようにしています。いろいろ問題があるじゃないですか。ハラスメントになっちゃいますから。でも昔はわりと普通に交際を促すこともありましたし、そうした機会をできるだけ作るようにしていました。今はなかり慎重ですけど、社内恋愛に関してはかなり積極的だったと思います。一生懸命バックアップをする気持ちは今も変わりません。

 

―あえて逆説的に、御社の姿勢はこの時代だからこそ再評価されるとも思いますが。今日は人と組織との関係が劇的に変わりつつある端境期だと思うんです。経営者側からしてみると、難しい時代だとも思うんですけど、だからこそ一人ひとりの社員の私生活の幸せを願うような、経営スタイルが再評価されるのじゃないかと。結局社員の幸せはプライベートの充実、家族の幸せと直結しているので。それってすごく温かくて、僕は逆にいいなと思いますけど。

でも普通なんじゃないかと思いますけどね。誰しも不幸になってほしいとは思わないですからね(笑)。結婚式をしてあげたりもしています。

 

―そんなこともあったんですか!(笑)

何回もありますよ。

 

―その思い出は一生残りますもんね。社員の人も。

ねえ、残って欲しいですよね。結婚式やってほしいと言われたらいつでもやりますよ。私の家でもいいし、ここ(会社)でもいいし。別にそれは簡単なことじゃないですか。なので、そんなに深くは考えていないですけどね。

社内恋愛はどんどん頑張ってもらいたいなと。やっぱり社員が幸せになるのは嬉しいですからね。彼らが幸せであってこそ、私もやりがいがあるので。

社員やその家族に関して一貫して言いたいのは、人生の少なくない時間を共にする仲間ですから、喜びも苦しみも分かち合える存在でありたいとの願いを持っています。

 

地域社会・金融機関との関係

―地域社会との向き合い方については、いかがでしょうか。

当社は特定の地域だけで活動をしているわけではないので、各地域で思い浮かべる対象となったときに、やっぱり一番は、先ほど言った、困っている人たちの施設なんです。子供が減っているので、小学校を廃校にして障がい者の通所施設に作り変える、という流れがあるんですけど、そこに自動ドアを設置しています。

昔の小学校って全然バリアフリーじゃないじゃないですか。そこで自治体が困って、我々は自動ドアを付ける見積りを出すんですけど、決まらなかったんですよね。なぜかというと予算がないという話で。施設は車椅子の人たちが通って、そこでものを作ったりするんですよ。それで毎回その施設のドアを通るたびに介助者のサポートが必要で。車椅子の人も自分で通いたいという気持ちがあるんですよね。自分ひとりで生活をしたいという人たちはいっぱいいて。

自治体としては何とかしたいんだけど、バリアフリー工事にはお金がかかりますと。でも困っている施設、困っている障がい者の方々がたくさんいて、高齢化が進めば進むほどそういった施設は増えていってしまった。

そこで我々がNPO法人を自前で作って、自動ドアを我々の募金活動で寄付をしましょうということを始めて、かれこれ7年ほど経ちます。賛同してくれている会員の会費や寄付金でやっているので、年間10施設くらいしか付けられないんですよね。重篤な障がい者の方々の通所施設を優先してやっています。

 

―これまでに何件ほど設置しているのですか。

ものすごい数の申請がくるんです。付けてほしいと。全部はできないので、優先的に重篤な障がい者の方々がたくさん使われている施設を中心に。年間10台くらいでしょうか。寄贈した物件は、累計100台を越えています。

 

―後日、可能だったら施設に取材に行ってもいい?

もちろん。いろいろな施設に納品実績があります。

 

―金融機関との向き合い方についても、教えてください。

企業が大きく成長し始めたときにカギになった取引先、会社の危機を救った取引先といった意味でも、金融機関というのは大きくて。当社創業後10年~20年くらいは、地元の信用金庫さんが当社の支援をしてくれました。当社が全国に展開できたのも、その信用金庫があってこそです。

今、7割くらいが自社物件なんです。1つの営業所を作るのに、不動産を購入して5千万とか8千万ぐらいかかります。賃貸でやればいいと言われるんですけど、やはり地元の人たちから信頼されるには、賃貸では難しかったんです。昔はとくに。「賃貸だったらどうせすぐ撤退するだろう」と捉える方もいましたから。不動産を購入すれば地元の工務店とも接点ができますし、「あそこを買って進出した」と地元からも信頼される。だから自社物件にこだわりました。

当時は売上も少なかったのですが、その信用金庫さんだけは、ものすごく融資をしてくれたんです。そのおかげで、おそらく10箇所以上の拠点をまとめて作ることができたと思います。信用金庫の融資規模といえば、多くて2億円とか3億円くらいと思います。当時、小さな会社だった当社に13億円です。信用金庫のなかでも、たぶん大口の融資先だったはずです。おそらく信用金庫としては難しかったはずなんです。よく行っていただいたなと感謝しています。

今はメインバンクは変わりましたが、これから先もお付き合いはさせていただきたいと思っています。その信用金庫さんのおかげで工場も作れたし、営業所もたくさん作れたというのは、間違いない事実ですからね。

 

また、他の大手金融機関の話になりますが、先代が倒れた時、真っ先に来てくれました。「吉原さん、もし増資をするんだったら、その分の融資をします」という話をしてくれたんです。当時、私は若かったので、まさかそこまで言ってくれるとは思わなかった。増資ってどういうことかというと、だいたい経営者・オーナーが亡くなったり、問題があったときに、株の件でもめるじゃないですか。私に経営権がない、要は株式の保有率が低いと、追い出されちゃったりするんですよね。

そういった権力争いの真っ只中だと、たぶん思ったんじゃないですか。で、私に増資しますよと。会社を安定させるために私の持ち株比率を上げましょう、とパッと言ってくれたんですよ。

心強かったです。私を信頼してくれたんだと。実際はその必要はなかったんですけど、その気持が嬉しかったですよね。

他にもお世話になった例としては、某銀行の支店長が、当時としては珍しいと思うんですけど、自動ドアをうちの自動ドアにしてくれたんです。たぶんはじめてじゃないかな。私が担当して。銀行の入り口って、ステンレスで高級なんです。競争会社が戦後ずっとそれをやってきたので、入り込めなかったんですよ。そこに入れてくれたんですよね、まっさきに。

 

―その理由は?

たまたま私がお世話になったというか、親しくなったというか。当時、その支店の人たちと、うちの社員とで、さっきの交際の話になりますが、お互いの社員に交際相手がいなかったので、一緒に合わせる場を作ろうと言って、釣り大会を開いたんです(笑)。バーベキューをしたりしてね。ようは、その支店長とウマが合ったんです。本当にお世話になって、うちの自動ドアを使ってくれて。その後、ご引退されましたが、今でも交流があり、仕事でもお世話になっています。たまに会って飲んだりもしています。

 

お客様との関係

―お客様との向き合い方についても、具体的なお話を聞かせてください。

某大手サッシメーカーさんですかね。すごくお世話になっていて、当初は自動ドアのサッシの部分を仕入れていました。それがだんだん、店舗などの自動ドアをサッシと一緒に受注し始めた時期があって、その時の責任者が当時常務だった方です。

その方が積極的に日本自動ドアを使ってくれて、最終的に大手コンビニエンスストアの自動ドアを契約できる道を開いてくれたんです。それから約15年、当社の売上もおかげでかなり伸びましたし、全国の店舗の半分がうちの自動ドアとなり、1万箇所に設置させてもらっています。

その方が私に言ってくれたのは、「日本自動ドアは技術力が業界内で断トツに高い」と。そして、「顧客の側から見てやってほしいと思うこと、例えばコンビニエンスストアは北海道から沖縄まで、全国でできなければいけない、しかも24時間やらなければいけないという要望に答えてくれた会社なんだ」と。うちも一生懸命営業所を作ってきたので、その部分をはっきり評価してくださったのは本当に嬉しかったですよね。

 

―その方はもう引退されている?

その方はだいぶ前に引退され、今は当社の顧問になっていただいています(笑)。

 

―すごいな(笑)。

 

株主とは?

―株主については?

基本的には同族会社で、家族でやっていて、株は私と親族が持っています。ただ、株に対する思いとしては、私たちは自分たちの株主と思っているのはお客様なんです。長年に渡ってずっと保守契約を結んでくれている、そのお客様が実は大株主というかうちを支えてくださっている。当社の社員の給料分くらいはその保守契約でまかなっているので、5年10年と契約を結んでくれているお客様が、むしろ株主的な価値を持っていると思っています。

私たちは年に2回定期点検に行くサービスを提供しています。そこに信頼を寄せていただいて、毎年固定的な契約料をお支払いいただいているという関係なんです。なので、当社にとっては一番大きなステークホルダーがお客様になります。

 

―未来のステークホルダー、未来に御社に関わっていただく方に向けてのメッセージは?

やっぱり、私たちは誰もが建物に出入りする通行者なんですよ。そして自動ドアはそこで人の出入りを見ているものです。未来の自動ドアはどうなるかというと、先ほどサイネージの話をしましたが、当社の自動ドアは一人ひとりの動きや健康状態、お店に入ってきた来店者へのサービス・受付という機能を自動ドアに持たせようとしています。

自動ドアの前に立ったときに、「いらっしゃいませ。お薬を取りにいらしたのですか?」という受付に始まり、その人工知能のプログラムもこれから開発していきたいんですけど、受付機能兼、利用者の状態の把握などもしていきたい。利用者がそこで買い物をしたい高齢の方だったとしたら、そこにサービスロボットが駆けつけて、買い物を一緒に手伝ってくれるとか、そういったことを自動ドアに真っ先に把握をさせる。人が建物に入る際一番最初に私たちは接する機会を得るのです。

いままでの機械としての機能だったらなにもできなったんですけど、認知機能があって、頭脳があって、AIがあって、カメラで認識もできて、将来的には健康状態もわかるようになると、できることが広がるんです。そのためにブルートゥース機能を搭載して、通信手段も確保し、アプリケーションも増やしている段階なんですよ。

だから未来の自動ドアでは、私たちの一番のステークホルダーは通行者という答えになると思います。市井の方がステークホルダーになり、お客様として私たちの自動ドアを必要としてくださるようになる。もしかしたら、その通行者は障がい者かもしれません。ベビーカーのユーザーかもしれません。あるいは、私や家族かもしれない。通行者である私たち自身がステークホルダーになります。つまり、私たちは作る側でもありながらユーザーにもなる。

 

ステークホルダーを大切にする会社を増やすには?

―ステークホルダーを大切にする会社をどうすればこの社会に増やすことができるのか。

ステークホルダーと言ってしまうと、利害関係者となります。ステークホルダーを大切にするのは当たり前のことです。でもステークホルダーはあくまでも利害関係者であって、利害が関係している方に限定されてしまいます。私が思うのは、ステークホルダーというよりも、倫理とか、世の中や人のためにちゃんと役に立つことをしようという意識を一人ひとりがどう持つかが大事なのだと思います。一人ひとりが人や社会にいいことをただ誠実に日々実践していくことをどう実現できるかですね。

それはもしかしたら道徳とか教育の提供かもしれないし、いいサービスの提供かもしれないですけど。ただ、産業でも人に悪影響を及ぼすビジネスがあります。例えば、昔の水銀の水俣病などね。悪影響を及ぼすビジネスは今も様々な形であると思います。だから、一人ひとりがきちんと考えて、自分たちがやっていることは果たして人類にとっていいことなのかを振り返ることが必要なのだと思います。

私も自動ドアが人の役に立つものでなければ、この事業をしていないはずです。そこに意義を見出すためにも、自分なりの人への貢献、どこにどう役立つのかを考え続けなければいけないと思うんです。

ステークホルダーの中にも、悪質な業者がいるかもしれません。悪徳業者だったとしても頭を下げて、その人のために仕事しなければいけないとなると、その人たちは潤ってしまうわけですし、自分も悪の道の手助けをすることに繋がります。だからやっぱり、人類にとっていいか悪いか、人として正しい事業なのかをきちんと考えながら働く自覚を一人ひとりが持つことを考えなければなりませんよね。

単に儲かればいいんだったら、いくらでも儲かる方法はありますよね。別に自動ドアじゃなくてもいいので。簡単に設ける方法はたくさんあるけど、そうじゃなくて、人類にとって役に立つことをするということだと思いますね。そういう会社が増えればいいということじゃないですか。善悪を見定めずにステークホルダーを大切にしてもそうはならないと思います。やっぱり社会をより良いものにしていくというポリシーを基準にする必要がある。人類のために水を綺麗にしようとか、環境を良くしようといった部分だと思うんですよね。そこからステークホルダーが生まれてくるので、そのためのステークホルダーを大切にするということだと思うんですよね。

 

―元々の部分がしっかりしていないと。

そう、コアの部分がしっかりしていないと。コアの価値観、コアバリュー経営ですね。コアな価値観を見いださないと、その次のステップをやっちゃいけないとまではいいませんが、コアがはっきりしていないものをやってしまうと、犯罪的なことやグレーなことをしてしまったりするものです。だから人として正しいことをやろうという、人に役立つ事業をしようということがはっきりしている会社は、多分何をやってもあまり間違ったことをしないと思うんですよね。

 

―企業取材メディアの特徴として経営者の話ばかりになり、それでは企業の潜在化された本当の姿が見えてこないので、ステークホルダーメディアでは各ステークホルダーの話を聞くことで、会社の潜在領域を詳らかにしたいと考えています。会社の姿って決して経営者の言っていることだけでは完結しなくて、いろんな人にいろんな角度から話を聞いて書き表すほうが、よほどいい企業を見定めることができる。見えない貢献は、どの会社もやっているもので、そこにスポットを当てたい。御社の場合も、ぜひNPO法人の障がい者向けに行っている取り組みも、実際に施設の声を聞きたいと思います。

そういった観点であれば、当社は林業も行っています。その林業の話だけでもいろいろなステークホルダーがいますよ。サラリーマンしながら林業家を志している人とか。そういう人たちが当社が保有している山でチェーンソーの使い方などを学んでいます。もう150人くらい卒業生が居るので、面白いストーリーがその中にたくさんある。

彼らの講師を派遣してくれているNPO法人の自伐型林業推進協会さんや、もともと今回のプログラムを作った株式会社アースカラーの代表の高浜さんという人がいるんですけど、その人は地球の一次産業、農林水産業を担う人材を育成したいという志をもっていて、最初は農業研修を通じた人材育成をやられていたんですけど、私が山を持っているから林業家の育成を手伝ってくれということになり、林業研修をやりはじめたんです。すごく立派な志をもっていて、ホワイトカラーでもブルーカラーでもない、地球のために働くアースカラーな人材を育てようというコンセプトの会社で、とても共感しています。

 

―御社にとっては取引先にあたる関係?地域社会に対する?

まあ、林業研修のプログラムを一緒にやっているので、地球環境の再生でもあり、人材育成でもあり、雇用創出でもあり、それらを一緒に実現する良きパートナーということだと思います。一次産業に関わる、日本の山林資源をいかに有効活用して酸素を増やし二酸化炭素を減らせるか、またそこに魅力を感じて地球のために働く人材をどう作っていくかということです。卒業生もそれだけ出てきて、関東でも最大規模の林業研修所になっているので。その部分だけでもトピックとしてはたくさん話ができる。でもそれは私よりも他の担当者がいるので、そちらに聞いたほうが面白いと思います。

 

―ありがとうございました。

 

読んでくださった方に……

長い原稿を読んでいただきありがとうございます。本稿、日本自動ドアのステークホルダーとの向き合い方を通して、日本自動ドアの公器性や存在意義が読者に少しでも伝われば幸いです。次稿では、各ステークホルダーから日本自動ドアがどう評価されているのかを具体的に追っていくことで、昨今隆盛しているステークホルダー資本主義が、伝統的日本式経営の価値観と、その精神性に於いて軸を一にするものであることを詳らかにしたいと思います。

日本にはいい企業がたくさんあります。売上やROE、利益率、社員満足度といった既存の尺度ではその良さが推し量れない企業も、ステークホルダーとの関係性を詳らかにすることによって再評価できるのではないか、というのが、ステークホルダーメディアの狙いです。

 

 

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