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VALT JAPAN株式会社

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ネクストヒーローシステムを携えて全国拡大を目指すVALT JAPANの戦略

障がい者が企業の人手不足を救う「ヒーロー」に!

2019年12月、東京都内の企業の障がい者雇用率が2.0%と過去最高を記録したと発表された(※1)。しかし、全国的には障がい者雇用は遅々として進まず、実際に法定雇用率を達成している企業は、令和元年度の時点で48.0%と5割にも満たない(※2)

全国におよそ900万人いると言われる障がい者が活躍できる場がまだまだ少ない中、障がい者が仕事で活躍できる場を創り出しているのが、VALT JAPANだ。障がい者にどのようなスキームで活躍の場を提供しているのか、また将来どのような世界を目指すのか、同社の代表取締役小野貴也さんに話を聞いた。

企業が抱える障がい者雇用の問題とは

小野 今、民間企業は人手不足で、社内だけでは仕事がなかなか処理できず、人材募集しても人が集まらない状況です。全国に約900万人いると言われる障がい者は、企業にとって戦力的なリソースになるはずです。現に、当社とお取引いただいている企業の経営者や幹部クラスの方々からは、「これからは多様な人材を活用して競争力を発揮する時代だから、女性だけでなく、外国人、高齢者、LGBTや障害者の方にも活躍してもらわなければ」」という声も耳にします。

 

―障がい者の法定雇用率が上がる一方で、民間企業も国・地方公共団体も実雇用率が目標値に追いついていない現状があります。これはなぜだとお考えですか?

実際に障害者雇用が進まないのは、障がい者のために切り出せる仕事がどんどんなくなってきていることがひとつあるのだと思います。民間企業では「障害者には単純作業をお願いするもの」という考え方が未だ根強い。働き方改革で社内の単純作業がどんどんRPAやAIに取って代わられていることもあり、健常者の事務仕事ですらも減っている状況です。そうなると、障害者にまわせる仕事が余計になくなってしまう。

 

―単純作業でない仕事は、アウトソーシングしてしまうと。

はい。僕らはまさにそのニーズを拾っている企業なんです。当社が一貫して手掛けてきたのは「障害者特化型BPO事業」と呼ばれるものです。企業の業務の一部を請け負い、当社に登録している障害者や難病患者などの、いわゆる就労困難者のワーカーに割り振り、それを僕らが検品して納品する、という事業をしています。就労困難者にこれまでなかった仕事の流通圏を作ることが、このBPO事業の大きなテーマです。

これまで、400種類以上の仕事を受注してきました。たとえば、あるECサイトの商品ページを全部つくるお仕事を請け負ったことがあります。これは、商品説明のライティングから商品画像の加工・入稿、仕様の入力まで、6,000カテゴリ分すべて当社のスタッフで行いました。こういったプラットフォーム系の仕事とライティングの仕事が多いですね。

現在の登録者数は約7000名で、月間500名前後が稼働しています。障害別の割合で言うと、発達障害を含め精神障害者が一番多く、およそ7割を占めていますね。

 

―そんなに多くのワーカーさんやお仕事を抱えているとクオリティを担保するのはとても大変だと思うのですが、どのようにディレクションされているのでしょうか。

発注元企業の方も、ワーカーさんに理解できるようなものに作り直したり、進捗管理表を別で作ったり、QA対応専用のシートを作ったりなど、細かく準備をしてくださるのですが、それでもなかなか理解が難しいワーカーさんもいます。

もうそこからは受注者の責任なので、そのワーカーさんのためだけにマニュアルを作り直したり、その人専用のマニュアルや動画を作ることもします。たとえば、「同じマニュアル・同じ作業環境なら70人はカンペキにできるが、30人はできない」という場合、本来ならばこの30人には作業から外れてもらったほうが効率はいいわけです。ですが、僕らはこの30人をあえてメンバーから外さず、いかに100%できるようになるかを試行錯誤します。

僕らは単なる発注屋さんになりたくてこの事業に尽力しているわけではありません。なので、ここの努力は絶対に怠らないようにしています。

 

―大変な苦労をされているのですね。特に精神障がい者の方だと、体調の波があると思うのですが、そのあたりはどう対応されているのでしょうか。

実は僕もかつて拒食症と過食症を繰り返す摂食障害に苦しみながら仕事をしていたので、体調管理と仕事の両立の大変さは身をもって知っています。なので、当社では、「体調不良などで納期までに間に合わないことが事前に分かった時は、事前に『ここまでしかできません』と言ってもらってOK」というルールにしてます。常日頃からワーカーさんにそういうお話をしているので、彼らもきちんと報告してくれるんですよ。

僕らはこれを「体調管理の自立度」と言っているのですが、うちのワーカーさんはこの自立度が高い方々がとても多い。だから彼らの体調と成果物の出来・不出来にあまり相関性はないと思っています。

 

―企業の中には、障がい者に活躍の場を与えることが社会的意義のあることだとはわかっているものの、実際に障がい者に仕事を発注するのはなかなかハードルが高いこともあるかと思います。そんな中で発注元企業がVALT JAPANに発注する意味とは何でしょう?

大量の案件をすべて一社完結でできることです。当社は約7000名のワーカーを抱えているので、業務量が膨大でも当社1社でまかなえるのでコストが下がります。そこが、発注元企業にとってひとつ大きなメリットです。

もうひとつ、「労働生産性を上げるためにアウトソーシングしたい」企業と「就労困難者の仕事での成功体験ができる場をつくりたい」当社の利害が一致することもあります。結果として、企業は当社に発注することで、社会的により意義のある我々の活動に参画できるし、こちら側はワーカーさんの成長の機会が得られる。つまり、両社ともwin-winの関係になれるんです。

 

企業の障がい者雇用を後押しする!ネクストヒーローシステムとは

―障がい者に業務をアウトソーシングしているといっても、直接雇用しているわけではないので、障がい者雇用率のアップにはつながりません。この部分で御社がサポートできることはありますか?

当社が最近新しく始めたのが、「ネクストヒーローシステム事業」です。僕らが5~6年間BPOやってきてわかったのが、「ワーカーさんの中に実務経験を通して得たスキルと経験値をフルに発揮できる企業に就職したい」というニーズがあることでした。就職するには、まず体調管理の技術をワーカーさんに高めてもらわなければなりません。もうひとつは、実務経験だけではなくスキルアップする機会を僕らが提供することも必要です。

スキルアッププログラム(α版)

 このシステムは、ログインすると今日どんな仕事をどれくらいしたか、仕事量と稼働時間を入力できるようになっているんです。また、健康状態を毎日報告できる機能もついています。ワーカーさんは自主的にきちんと報告してくれますね。仕事量と時間、健康状態はデータになって見える化されるようになっています。あとは、スキルアップトレーニングを受講できる機能やお仕事を受注するためのクラウドソーシング的な機能も実装しているので、ワーカーさんにはかゆいところに手が届くシステムになっていると思います。 

もうひとつ、最近新しくローンチしたのが「ネクストヒーローゾーン」という機能です。

 

―「ネクストヒーローゾーン」とは?

これは、簡単に言えば「自分の体調管理の自立度と職務満足度を両方高めていくための機能です。体調管理の自立度を縦軸、職務満足度を横軸に取り、両方とも一定ラインに達したゾーンを「ネクストヒーローゾーン」と呼んでいます。当社ではこのゾーンに達してはじめて就職への切符をお渡しできる、と言っています。

NEXT HEROゾーン(β版)

あくまで企業にとって戦力的パートナーになってほしいので、体調管理の自立度も職務満足度も低くていいのはありえません。この「ネクストヒーローゾーン」入りを目指してもらうために、僕らは読み物や動画、毎日の体調報告システムなど、必要と思われるタスクを全て用意してます。

業務&体調データ(α版)

ここで仕事量や稼働時間、ヘルスケアのデータが日々蓄積されていくので、これを障がい者採用を検討されている企業の人事担当者に共有します。そうすると、人事担当者も自社の仕事ができる人がいるのがわかるし、ワーカーさんも「この仕事だったらやってみたい」と言える。要は、採用前に双方の相性がスクリーニングできるんですよ。

 

―それはすごいですね。実際に御社の業務を受けた障がい者の方で就職に結びついた方はいらっしゃるのでしょうか。

はい、地方に住む精神障がい者の方で、企業への就職を果たした方がいます。この方は、年齢も若く、社会人経験が全くありませんでした。地域の就労継続支援事業所に通っていたのですが、あるとき当社のウェブサイトを見つけて、「ちょっと試しにやってみよう」と登録したのだそうです。PCを使って仕事をした経験がなかったので、最初はテキスト入力もおぼつかない状態だったのですが、そこから3か月間、ライティングやプラットフォーム系のお仕事などいろんな仕事にチャレンジしてもらいました。

そんなときに、この方から「企業に就職したい」と言われたのです。僕らもその当時、特に就職口を用意していたわけではありません。でも、「履歴書と職務経歴書とは別に、この方のこれまでの業務経験や経験値をデータで見える化すれば、就職の上で強い武器になるのではないか」と思い、そのデータを企業側に提示してもらいました。そうしたら、超大手企業でテレワークでの就職が決定したのです。

この方は人生で初めて、自分が仕事で役に立てる喜びを経験することができました。その後、「VALT JAPANとの出会いとこんな喜びが味わえるという経験を、自分と同じように障害と向き合ってる人たちにもっと知ってほしい。それを伝えるために、就職後もしっかり活躍し続けていって、VALT JAPANのモデルケースになりたい」と言ってくれました。うちのワーカーさん、「自分が同じような障害を持っている方のモデルケースになる」と言ってくれる方がけっこういるんですよ。それも僕らのやりがいになっていますね。

 

行政連携の実証実験もスタート

―今後は行政連携にも力を入れていくと伺いました。具体的にはどのように進める予定なのでしょうか。

実は、すでに鎌倉市で2019年10月から実証実験がスタートしています。鎌倉市は今、「市で雇用している障がい者を2000人にしよう」という「を行っているんです。鎌倉市の市長さんが当社の事業にすごく興味を持ってくださって、「まずは市役所で導入してみよう」という話になりました。

市役所に勤務されている障がい者の方にネクストヒーローシステムをお試しいただいて、利用者の方やほかの職員の方から「こういう機能も作ってほしい」「こうしたほうがいいんじゃない?」とさまざまなフィードバックをいただいています。ネクストヒーローシステムはまだまだ改良すべき点がたくさんあるので、こういった声はありがたいですね。実証実験は1年半ほど続きますが、鎌倉市さんのノウハウを活用して、自治体向けパッケージをつくろうと思っています。

 

―御社の使命は何でしょうか?

就労困難な方たちを、ビジネスの戦力として、日本経済を引っ張っていくような人材にすることです。そのために、仕事というフィールドの中で、今就労困難なすべての方が仕事をつうじて自分自身の存在意義を強く実感し続けられる未来を作りたいと考えています。

先ほどお話したように、僕自身も摂食障害を持ちながら仕事をしていた経験があるので、障がい者を持ちながら働く苦労が身に染みてわかりますし、障害を持った方々がどうすれば働きやすくなるかがわかっているつもりです。自身の経験も生かしながら、障がい者の働くフィールドを拡大していきたいですね。

 

※1:「都内企業の障害者雇用率2.00%、過去最高 19年」『日本経済新聞』 2019年12月25日<https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53792950V21C19A2L83000/>

※2:厚生労働省「令和元年 障害者雇用状況の集計結果」<https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08594.html >

<プロフィール>

小野 貴也

大学卒業後、新卒で大手製薬会社に入社し、MRとして精神疾患系の医薬品を担当。たまたま参加した精神疾患の患者向けの座談会で、彼らには仕事の成功体験がほとんどないことにショックを受け、障がい者など就職困難な人たちが仕事を通じての成功体験を得られる場をつくるべく、起業。以来、7000名以上のワーカーをまとめ、400種類以上の仕事をクライアントから受注している。「障がい者みなし雇用制度研究会」にも外部委員として参加。

VALT JAPAN株式会社

設立:2014年8月1日

本社所在地:〒104-0061 東京都中央区銀座5-6-12 みゆきビル7F

TEL:03-5774-2131

FAX:03-5774-2132

事業内容:

・障がい者特化型BPO事業

・オンライン定着支援事業

・仕事と体調の両立支援システム「NEXT HERO」運営事業

・CSR・CSV*推進支援事業(CSV=Creating Shared Value(共通価値の創造))

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08594.html

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