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株式会社エスプールプラス

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障がい者雇用に新提案 株式会社エスプールプラスが取り組む「障がい者・企業・自治体を繋ぐ農業運営」

「『障がい者の雇用の促進等に関する法律』に基づく法定雇用率」。この言葉に今、多くの企業が頭を悩ませている。 政府は障がい者の職業安定を図り均等な機会と待遇の確保する、という美辞麗句を掲げている。だが、実際に彼らを雇用しなければならない現場レベルでは、その採用・与える仕事・給料と問題が山積しており、足を踏み出せないでいる、というのが現実だ。

しかし、数値目標だけは上がり続けている。平成30年にはそれまで民間企業で2.0%だった法定雇用率が2.2%に引き上げられ、さらに令和3年4月までにはプラス0.1%にしなければならない、と定められた。

だが、どうやってその数値目標を達成していくのか?法律を決めた官庁すらも雇用の水増しを行っており、批判を受けたのも記憶に新しい(「障がい者雇用水増し3460人 国の機関の8割、雇用率半減」日本経済新聞2018年8月28日)

 果たして人は、そして企業は社会的弱者である彼らに手を差し伸べ、社会の一員として活用することができるのか?この現代社会に突きつけられた問いかけに、1つのアンサーを示しているのが和田一紀氏が社長を務める株式会社エスプールプラスだ。

 

障がい者雇用を創出しなければならない

改めまして、本日はよろしくお願いいたします。初めに御社の沿革についてお聞きします。

和田:弊社は2010年6月に株式会社エスプールの連結子会社として発足しました。当時の社名は株式会社わーくはぴねす農園といい、現在の社名に変更したのは2013年のことです。そもそも株式会社エスプールは就職氷河期が叫ばれていた1999年に大学生の就業を支援しようとしてスタートしたもの。当時の思いから、シルバー人材・シングルマザーなどの支援を行う中、『障がい者』という就業弱者の機会創出にも目を向けることになったです。

 

どうして障がい者に農業をやってもらおうと思ったのでしょう?

和田:「障がいのある方と農業は親和性が高い」と当時、厚生労働省や農林水産省も言っていました。事実、地方で農業人口が低下している地域では障がい者就労事業振興センターなどと協力し、農業に従事してもらっているところも多いのです。

 

御社は障がい者雇用のコンサルティング、そして企業向け貸し農園の運営という事業をされています。なぜこの事業に取り組もうと考えられたのでしょうか?

和田:まずはエスプールグループの理念でもある「雇用機会に恵まれない方々の雇用支援をする」という理念に合致していたということがあります。日本の多くの企業は今まで、法で定められた雇用率があるにもかかわらず、障がい者雇用に二の足を踏んでいた。

 

現在日本における障がい者人口は963.5万人(日本の人口の約7.4%)といわれています。その中で民間企業に雇用されている数は53.3万人。わずか5.5%のみです。

和田:以前でしたら「障がいのある方を雇うくらいなら納付金を払っても構わない」という企業も多かったように感じます。そのころ私が商談した企業の10件に5件はそんなところでした。しかし近年、特に東日本大震災から復興に向かうにつれてその風潮は大きく変わってきました。今ではそんなことを言う企業はほとんどありません。2000年代初頭のITバブルのころの、拝金主義・儲かればいいという空気感は薄れ、企業が儲けるだけでいいのか、従業員が幸せになってかつ売上も伸ばすためにはどうしたらいいのか、と考える企業がとても多くなってきていると思います。

 

障がい者雇用で企業が得るメリット

御社のビジネスモデルについてお伺いします。障がい者雇用に悩む企業に対して、御社がどのような提案をしているのでしょうか?

和田:まず、障がいのある方を雇用したいという企業様(クライアント)に、就職を希望する障がいのある方を紹介します。クライアントは彼らを社員として採用します。彼らが働く場は弊社の運営する障がい者のある方に配慮された農園です。農園ではハウスや休憩棟など各施設を企業で共同利用頂き、そこで彼らは農業に従事していもらいます。彼らは企業の社員ですので、仕事の指示だしや管理は全て企業側が行います。ただし、農業指導や障がい者の定着支援などで弊社が企業をサポートします。

農園での作業の様子

企業(クライアント)が農園の施設を借りて、社員になった障がい者にそこで働いてもらう、ということですね。

和田:彼らのお給料は各企業から支払われます。福利厚生なども受けることができますので、彼らは安定した待遇を得ることができます。ある企業では障がい者に与える仕事に悩み、終日シュレッター係をやってもらっていたとのことでしたが、それではやりがいもないし、定着率も低く、雇う方も雇われる方にもメリットがない。業務の切り出しに課題を抱えている企業は少なくありません。弊社の農園を利用いただくことで農業という障がいのある方にとってもやりがいを感じられる仕事を用意することができます。やりがいという意味では92%という彼らの定着率が物語っています。

 

どうしてこのビジネスモデルにたどり着いたのでしょうか?

和田:当初は障がい者に農業をしてもらうことで雇用を生み出そう、企業の利益も農業収入で上げてもらおうというモデルでスタートしたのですが、農業はそんなに甘いものではない。当時は計画通りに行く訳もなく障がいのある方が作った野菜を売って儲ける、なんて全く無理な話でした。今後はAIの導入なんかで可能になるかもしれませんが。それでこの事業も暗礁に乗り上げかけたのですが、ある時「収益モデルとしては無理だが、福利厚生の1つとして使ってもらうことはできるのではないか」と考えたのです。

 

―農業で利益を上げるのではなく、法定雇用率を確保する方法として利用してもらう、と。

和田:当初は非難ばかりでした。「大企業がわざわざ障がい者を雇って福利厚生のために野菜を作らせる? そんなことになんの意味があるんだ」と。しかしそもそも素人の集団がいくらやっても本業の農家の方と張り合うことはできない。その方針転換をしたことが今の成果になっている。もちろん、農園で働いているみんなの作った農作物は今でも、各クライアントで従業員向けに提供されたり、こども食堂で使ってもらったりと様々に活用されています。この取り組みにより企業間での障がいのある方を雇用するとうい理解が深まっているのは事実です。

農園の送迎の様子

障がい者が経済的に自立できるようになる

障がい者を雇用する、という事業の最も大きな課題はどこにあるのでしょうか。

和田:現在、障がいのある方の多くは収入を得ることができていません。知的障がい者最低賃金に達しているのは10人に1人、ともいわれてます。それでも、この事業を始めた頃には20人に1人程度、といわれてましたから大きな進歩をしているのですが。特に知的障がいのある方については生まれてからずっと健常者と分けられて生活し、そのまま大人になる。障がい者地域作業所などで仕事をしながら月に1万5千円ほどの収入を得ている。

これでは自立することなど不可能で、ほとんどが親元で生活せざるをえない。だから親もずっと負担を背負い続けることになる……。「障がいのある方の自立」には大きな課題があるといえます。

 

そのような彼らの生活を株式会社エスプールプラスでは大きく変えてきました。

和田:私たちの農園で働くことで彼らの収入は格段に伸びます。それに企業の社員としての福利厚生も受けることもできる。こういった安定を得ること、そして仕事に対するやりがいを持てることで彼らは変わることができます。

1年も働くと目に見えて顔つきが変わり、生き生きとしてきますよ。それも嬉しいことに結婚をするケースも増えています。ですから親御さんは本当に喜んでくれていますね。最初は「こんなウマい話があるか、新手の詐欺だ」「障がい者を喰いものにしようとしているだけだろう」などと言われていたのですが(笑)。

農園で働く方。月日を重ねるうちに明るくなっていく方が多いという

やっと理解されるようになった、と。

和田:障がいのある方のご家庭は仕事を探すこと自体に消極的になっているケースが多いです。今まで就職できずにたいへん苦労をされた事があるので、良い話を聞いても疑ってしまうことも…。ですから私たちの最大の課題は「障がいのある方へこの事業を知って頂く為の啓蒙活動」なのです。

今、愛知県豊明市を始めに多くの自治体と協定連携しています。2019年2月には人口130万人を誇るさいたま市とも提携関係を結びました。自治体は市民の中の障がい者から相談を受けるし、手を差し伸べたいと考えている。それを弊社と連携して補うことができる。これからは行政という社会的信頼がある機関と手を取り合って、障がいのある方・農園参画企業双方に喜んで頂ける関係を構築していきたいと考えています。

 

逃げない覚悟であたらなければならない事業

最後に、今後についてお伺いします。

和田:これからも地に足をつけて、確実にやっていきたいですね。農業はどうしても天災に左右されることもあります。弊社でも2014年の大雪の時には、大きな被害を被りました。また最近の台風でも。

しかし今、私たちは障がいのある方々約1400人の就労をサポートしています。彼らが社会的に自立した生活を営んでいくためには、生半可な気持ちではできません。ですから諦めて逃げ出すという選択はできません。だからできる限り堅実に、備えをもって事業にあたっています。弊社の目的はフランチャイズを広げることではありませんし、勿論利益最優先でもありません。彼らの雇用を創出することでその対価として事業が成長でき、さらにクライアントが喜んでくれるサービスを提供できる。そうやって関係者みんなが幸せになっていく、というのがこのビジネスの正論ではないかな、と思います。

 

御社の経営がそのまま、社会貢献になっていると思います。

和田:あまり社会貢献とか偉そうなことは言えないのですが、ただ健常者なら簡単にできる職探しが障がいのある方には難しいケースもある。だから彼らにチャンスを与えることを誰かがやらねばならないし、そのチャンスを広げていかなければならない、という思いです。利益追求で障がい者を劣悪な環境で働かせたり、粗悪なサービスを提供するのではなく、純粋に関わる方々に喜んで頂けるサービスを提供したいです。障がいのある方々でも安心して長期で働ける基盤を作っていくことを大切に「雇用支援のリーディングカンパニー」というプライドを持って今後も事業を進めて行きたいです。

 

―ありがとうございました。

農園上空(さいたま岩槻)

農園の作物