/若者の感性全開の事業をインキュベーションするGOB IP株式会社 ~サポーターズミーティングレポート~

若者の感性全開の事業をインキュベーションするGOB IP株式会社 ~サポーターズミーティングレポート~

サポーターズミーティング

人から敷かれたレールを歩むのではなく、自分で道を切り拓いていく人生に憧れを抱くことは誰しもあるもの。さらに元来学生をはじめ若者は無限の可能性を持っているものだ。

ところが自己の可能性を試す機会をもたないまま、「なんとなく」レールに乗ることを強いられ、気がつけば就活が学生生活のゴールになっている人が少なからず存在する。「私たちは学生と一緒に第三の道を創り出したい」。

こんな志を実現しようと野心的かつユニークな取り組みを行うのがGOB Incubation Partners株式会社(以下、GOB)だ。今回は、実際の活動をレポートすべく、「サポーターミーディング」に参加させていただいた。

「サポーターミーティング」の中心となる「サポーター」とは、同社の種類株主のことである。昨年8月、最初の株主総会を行ったが、それから半年を経て「サポーター」の方々たちに改めての事業の進捗と若者の直截的な問題意識で立ち上げた新事業を紹介したいという意図で今回のイベントは開催された。それは終始溢れるほどの熱気に包まれたものになった。(文:増山弘之)

[GOB IP株式会社代表取締役社長山口高弘氏・櫻井亮氏に伺う]

写真左より 櫻井亮氏 /山口高弘氏

 

―GOBでは種類株主をサポーターと呼んでいるが、株主がなぜサポーターなのか?

山口氏「まず、弊社が発行している種類株の特長としてあるのが、持ち株数と議決権が必ずしも連動しないということです。株式会社なので、若者の感性で立ち上げた事業が社会性はあるものの、果たして儲かるのかという株主からの種々のプレッシャーは当然あるわけです。

持ち株数と議決権が連動している普通株ですと、株主の圧力が働き、本来やりたいことではなく儲かる事業の方に引っ張られてしまうという問題が起こります。種類株主では、議決権のシェアさえ確保しておけば、市場の論理に捻じ曲げられずに、我々が本来やりたいことができるのです。
逆に言えば、投資に対するリターンを得るだけの関係ではなく、株主との関係性がより、対等で多様なものになり、ファンになっていただくととともに、経営の参画者にもなるという共創環境が作りやすくなります。

そこで、今回の『サポーターミーティング』の意味は、私たちは株主の皆さんに家族・ファンとしての目線で活動自体に加わってもらいたいし、何よりもっと近くの存在として直接的に声を聞きたかったので『サポーターズミーティング』という名称にしました」

 

―「種類株主」という方式は日本では珍しいが

櫻井氏「改めて種類株とは、オーターメイド型の株式とも言えます。(会社法105条に定められている通り)普通株の株主には次の3つの権利があります。すなわち、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、そして、株主総会における議決権になります。

一方で、種類株は(会社法第108条に定められており)例えば、剰余金の配当を受ける権利、剰余財産の分配を受ける権利、株主総会における議決権の範囲の制限、種類株主総会での決議事項等の権利につき、普通株とは異なる設計をすることができます。

日本でも優先的に配当を受けることができる優先株をはじめとして、種類株の利用は増えてきています。また、アメリカにおいては、グーグルの親会社であるアルファベットを筆頭に、日本の種類株のように議決権が制限された株式は多く発行されています」

 

山口氏「今後こういう形式の会社は日本に於いても増えてくるだろうと思っています。言うなればユーザー参加型・株主参加型。よくある『モノを言う株主』というものとも違い、株主が自らの役割を自然に考えてもらえるような関係のありかたは、社会的課題先進国の我が国に非常にマッチしていると思います。

実は、我々も昨年8月の株主総会のときは『種類株主なんてものにどれだけの人が興味を持ってくれるのだろう』と心配でしたが、それでも100人程の人に参加していただき、合計約1千万円の出資もしていただきました。そこで、種類株でやっていくことに自信がついたのです」

 

―サポーターとともに実現していこうとするビジョンは?

櫻井氏「一番のビジョンは若者の感性を活かすこと、それを社会に問いかけていくことです。若者が自由に発想し生み出したアイデアを、私たちが事業に転換していく。ゼロベースから立ち上げて中長期にわたってメンタリングと呼ばれるサポートを行いつつ見込みを立てていきます。若者が事業を行う際、熟練者が事業を行うのに対して不利な面は明らかです。信用力、ノウハウ、資金、などたくさん足りないものがあります。

しかし言い換えると、これらが補われることで、若者の感性が社会に還元されやすくなります。例えば、社会課題に挑戦する場合行政との連携が必要な時がありますが、、個人では行政との繋がりが持ちにくい。そういう個人の力では難しい点を結んでいくのも我々の役割だと思っています。

若者はその感性をカタチにする方法を身につけるには膨大な時間がかかる。ただ闇雲に努力するだけではカタチにはならないですから、それを指導していかないといけない。」

 

―サポーターは具体的にどのような関係になるのか

山口氏「様々な意見や要望を出してもらいます。さながらサッカーチームのサポーターのように、『お前ら最近たるんでみえるぞ、何をやってるんだ!』といった口を出してもらえる、そういう要望を言い合えるような関係を構築していきたいと思っています。

ですから場合によっては、普通の株主より遥かに厳しい存在です。私たちのやり方がよい意味で常に監視されているのですから。他にもサポーターの役割を、サポーターたちから自発的に提案していただけるようにもしています。私たちはサポーターをお客様と思わず、出資者とも思っておらず、会社に一番近いところにいるファンとなっていただきたいのです」

 

―今後注力していく事業運営のポイントについて教えてほしい

山口氏「まずは、ビジネスとして拡大するか否かという軸を最重要視して判断するのではない、というのが大事なポイントです。勿論、何を成し遂げたいのかを事業担当たちには具体的に指し示してもらいますが、その荒削りの感性を磨いて広げていくのが私たちのミッションです。

その時に世間の流れに振り回された方針を選んではならないと思っています。マーケットに摺り寄せるほうが何十倍も簡単なことです。そうはならず、本当に価値のある事業を生み出していくことが社会的に意義のあることですし、求められているのです。

ただし、社会価値が見極められ、どのような手段でそれが具現化できるのかを掴めたとしたら、その価値を最終的にはユーザーと言われる対象者に届けなければならない。このタイミングで、マーケットと徹底的に向き合います。どのマーケットにどのような製品サービスとして届けるのか、ここを最新の戦略戦術論を駆使して磨き上げます。順番が、大事なのです」

櫻井氏「儲けることを第一に考えるのは無用なプレッシャーだと思います。若者たちにはそれよりもっと大きな『世に何を問うのか』という点に力を注いでもらいたい。また我々は、彼らにそういう指導をするメンターたちのネットワークを充実させ指導体制を確立していかなければならない。若者ベンチャーのライザップ、みたいなのを目指しています(笑い)」

 

―中小企業経営者にメッセージを

山口氏「中小企業の経営者にお話を伺うと『本当は別のことやりたい』と言われることが多い。中小企業経営者の中には、どうしても社員のことや借金のことが頭にあって冒険の一歩が踏み出せないでいる方がいらっしゃいます。立派な考え方であるともちろん思います。

一方で、経営者としての感性として、本当にやりたい、と求めていることと今やっていることがズレてしまっている場合が少なくない。

そういう会社で育った社員もまた、感性を重視した仕事、創造性のある仕事はできなくなってしまう。だからただ感性の赴くまま、やりたいことを貫きながら経営も成立させようとする若者たちを応援することで、その気持ちを思い出して欲しいと思っています」

 

[サポーターズミーティング]

最初に事業体としてのGOBの説明がなされ、サポーターへの感謝と期待が述べられた。続いて各事業の紹介にうつり、今回、特に時間が割かれたのは、最も進捗しているPAPAMOの報告。またCo-nectなど、意欲的で先鋭的な新事業が次々と紹介された。

 

PAPAMO橋本咲子事業責任者

PAPAMOは親が子供と一緒に、自由に全力で遊べる時間を提供する事業。一年前の総会で事業計画を発表し、多くの支持を得た。今回はその計画の進捗状況の報告となった。
「各地に保育士や習い事の先生などの子供と遊ぶ専門家を派遣し、子供達が心ゆくまで遊ぶ時間を提供できるのがPAPAMOです。30平方メートルのスペースがあれば、キャリーバッグ一つで派遣できるので全国展開も可能です。スタッフは皆、親戚のお兄ちゃんみたいな親しみのある存在。すぐに子供と仲良くなれます。子供達が遊んでいる間、ママはママ友たちと楽しくお話していることもできるし、パパたちは仕事をしながらでも、子供を見ていることができます」

事業計画について

「昨年8月の発表の段階で、都内に3拠点持っていました。それを10拠点に拡大する計画を示しましたが、皆様からの支援のおかげで、それを達成することができました(会場から拍手と歓声が上がる)。また利用者は3.5倍の776人、スタッフも4.3倍の26人に増やせました」

今後の展開と、将来について

「拡大していく中で、拠点立ち上げの方程式みたいなものが見えてきたが、拠点展開だけでは限界があることも分ってきました。今後は法人との提携や商業施設での活動なども視野に入れていきたい。また子供と遊ぶ先生の教育体制や本部スタッフ不在でも運営できるオペレーティングシステム、そしてそれらのフランチャイズ化というビジネスモデルなども整いつつあります。今後は50拠点に拡大、そして3年後には世界へと広げていきたいと考えています」

 

Co-nect中山代表

Co-nectはワーク×フィットネス×ワークを掲げ、オフィスやカフェといった空間での身体トレーニングを事業としている。
「今のオフィス空間ではヒトは野生を失っています(会場、爆笑)。原始、ヒトは森の中で生活し、体を動かしながら頭を働かせていました。その結果、道具を使うことを覚え飛躍的な進化を遂げました」

「ですから、仕事の合間にフィットネスをすることで脳が活性化し、仕事の直感力を磨くことができる!」と中山氏は語る。

具体的に、オフィスでフィットネスとはどういうものなのか

「オフィスにトレーナーを置き、一時間に一回5〜10分程度の運動の時間を設けたりなどして外圧的に運動を取り入れることで、脳と体のハイパフォーマンス状態を維持できるようにします。トレーニングジムを併設したりするとなると大規模な設備投資が必要になりますが、弊社のビジネスモデルならばトレーナーを常駐させるだけで済むので、手軽に同じ効果を得ることができる」

今後の展開について

「日常の様々な空間を『Co-nect化』したいと考えています。カフェやフリースペースなどにトレーナーを置き、どんな時も自由に体を鍛えられるようにする。これから1年で5店舗、そしてフランチャイズ化することで3年後には100店舗の達成を目指しています」

 

はたらける美術館事業東里氏

 

オフィスとアートスペースを合わせることで、働く人のクリエイティビティを活性化させよう、というのが「はたらける美術館」事業だ。

「仕事に創造性が求められることは多いですが、創造力は外から取り入れてくるものではありません。それは自分の内側に持っているもので、多くの人はそれを引き出す方法を知らないだけです。なのでアートを身近に置いた空間で仕事をすることで、自分に隠された創造力に気づいてもらいたい」

しかし、と東里氏は続ける。「ただアートを眺めているだけではその本質に気づくことはできません」。

「アートには解釈が必要です。ですから、私たちはファシリテーターを配し、対話型鑑賞プログラムというのを行っています。対話によってより深くアートを実感し、自らの血肉にしていく。今後は画廊と提携し、アートプラットフォームを構築、今年度内に10店舗にしたいと考えています。例えば画廊そのものをオフィスとして利用したり、無機質な会議室を働ける美術館にしていく。それが私たちの事業です」

 

ヨンブンノサン事業丸山氏

名画の一部に開いた空白部分を色鉛筆で描いていくぬりえ「ヨンブンノサン」。子どもたちの想像性を育む事業です。

「高知県主催のビジネスコンテストで優秀賞をいただきました。この事業の目指すものは、想像力を育むことで①子どもに自己肯定感を持ってもらうことと、②自己表現にのめり込むひと時をもってもらうこと。描いた絵が褒められることで、描いた子ども達は夢中になって自発的に動き出してくれる。想像力は肯定されてこそ開花するのです」

その話を聞いて、会場の人々がうんうんと頷く。

「空白の周囲の名画部分から湧いたイメージを、空白部分に描く。全くの白紙ではなく、ぬりえに近い。想像力が湧きやすいよう、適度にルールを設けているんです。そして描いてもらった後は、子どもが描いたものを大人が褒める。そうすることによって、子どもは自分の内から湧き上がったもの=自分そのものが肯定される安心感を得られます。

自分が描いたもの、生み出したものへの肯定は、子どもの自己を広げ、深め、ものごとを自分で決めて生きていく力や新しい人間関係への出発点になっていきます」

Contakids事業萩原氏

親子で一緒に楽しむ身体メソッド、「肌と肌の触れ合い」を重視するContakids。親子が共に、対等の立場でお互いの体に触れ合い、コミュニケーションを取ることが子供を成長させる、という。

「同じ行為を親子が交互にやり合うことで、子供は自信を持って世界と向き合っていけるようになります。既に体験した親たちからは『自分の子供がこんなに生き生きと動き回ることができるなんて』と驚かれました」

また大人たちも、子供と触れ合うことでリラックスし一息つく時間にして欲しい、と萩原氏は言う。

「今、親子がそういうコミュニケーションを持つ時間はなかなかありません。親も自分の体を使って子供が喜ぶ様子を見ることができるので、肯定感が生まれる。そうして、皆が人に優しくできる社会にしていけたらいいと思います」

続いてこれから発進する様々な新事業の紹介に移った。

 

新事業紹介

・「はたらく人生に余白を創造する」と題し、クルマを使って自然の中で働く・学ぶという「カンターキャラバンジャパン」

 

・地域の力を他の地域と結ぶことで新たな価値を作る「LINK AND BRIDGE」。・ジャパニーズポップカルチャーとゲストハウスを一つにした「Takuand(たくあん)」

・ハーブを用いて様々なことに挑戦する「HERBALANCE」

 

・シェアリングエコノミーを大学生限定で行うモノとモノのマッチングサイト「Rich bonds!」

 

・ファッションを広く捉え、生活と一体にした新ブランド「TTT(Takaaki Tokyo Temporary)」

ほかにもオウンドメディアと子供のスポーツ会社など様々な事業が動き出しているという。

盛況のままに終わった今回のミーティング。駆け足だったが、だからこそもっと詳しくその事業が知りたい、応援したいと思う人が多かった。その証拠に、各テーブルではサポーターたちの会話が留まることなく続き、若者の示してくれたビジョンに胸を弾ませていた。
次々に現れてきた新事業の勢いとその迫力に圧倒されたイベントだった。

山口高弘(やまぐち・たかひろ)
GOB Incubation Partners株式会社 代表取締役
高校卒業後、不動産会社を起業し事業売却。さらに複数の事業の立ち上げと売却、起業家のコーチング等の活動を手掛けた後、野村総合研究所(NRI)にてビジネス・イノベーション室長としてコンサルティング業務に従事。
現在はGOB Incubation partners株式会社のCo-founderとして若者の感性・原体験に基づく起業家及び事業養成を担う起業家コーチ業を手がける。
年間に10社を輩出すべく現在進行系でインキュベーションに取組む。
複数の大企業の戦略アドバイザーも兼務。2003年(株)野村総合研究所に所属、2011年同社ビジネスイノベーション室長に就任。2010年内閣府「若者雇用戦略協議会」委員、2011年産業革新機構「イノベーションラボ」委員にて新規事業開発支援を展開、2014年(株)GOB Incubation Partnerを創業。

櫻井亮(さくらい・りょう)
GOB Incubation Partners株式会社 代表取締役
日本ヒューレッド・パッカード、企業支援等を経て、2007年よりNTTデータ経営研究所にてマネージャー兼デザイン・コンサルティングチームリーダー。2013年より北欧系ストラテジックデザインファームDesignitの日本拠点Designit Tokyoの代表取締役社長に就任。2015年1月より独立してシリアルアントレプレナー実践中。新規ビジョン策定・情報戦略の企画コーディネート、ワークショップのファシリテーション、デザイン思考アプローチによるイノベーションワークなどを手掛ける。

GOB Incubation Partners株式会社
東京都渋谷区千駄ヶ谷2-34-12

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