/ファミリービジネスが日本を救う? 見直されつつある企業形態

ファミリービジネスが日本を救う? 見直されつつある企業形態

「世襲=悪」という画一されたイメージが浸透してから幾星霜。「同族企業(ファミリービジネス)」と聞くとこれまでの日本社会においてはネガティブなイメージで捉えられる場合が多かった。しかしその潮目が変わりつつあるようだ。

同族企業は悪なのか?

日本の上場企業の5割強がファミリービジネスだと言われている。このファミリービジネス、意外に思われるかもしれないが、世界を股にかけたビジネスをしているビッグビジネスにも驚くほど多いのだ。ウォルマート、BMW、ミシュラン、エルメス、イケア、J・Pモルガンと挙げ始めたらきりがない。面白いのは、これらの企業にネガティブなイメージを持つ人は少ないことだ。

では、いったい日本ではいつからファミリービジネスにネガティブなイメージが持たれるようになったのだろうか。政治家の世襲とひっくるめて捉えられるようになったことを想えば、高度経済成長期の頃には既にその萌芽が見て取れるが、世相の空気を捉えるのに適した「今年の漢字」を見ていくと、一つ象徴的な年があることに気づく。その年を言い表す漢字に選ばれたのは「偽(ギ)」であった。

少し古い話をする。―遡ること11年―ファミリービジネスにとって、その年2007年はまさに受難の年だったと言える。不二家、赤福、船場吉兆、パロマといった老舗有名企業の不祥事が相次ぎ、マスコミ報道によって度重なる世襲経営批判が展開されたのだ。元来、マスコミというものは、企業の業績悪化や不祥事が表面化したときの理由を安直に体質論に求めがちな嗜好を持つ。すなわち、有名なファミリービジネスであれば、「同族だから」や「世襲だから」といった表層的なラベルに理由を求めてお茶を濁すのだ。

しかし、この「世襲=悪」という図式が政界から経済界にまで宛がわれるようになったことが如何に乱暴なモノの見方であるかは、実は翌年2008年にして既に、ひっそりとだが示されている。

その年、非上場ファミリービジネスのサントリーが46年間赤字を垂れ流し続けてきたビール事業をやっと黒字転換させたのだ。マスコミ報道がファミリービジネスだからこそ成し得た信念の業という物語で取り上げることはなかったが、どう考えてもこれは四半期決算の結果に右往左往せざるを得ない株主資本主義にどっぷり漬かった経営者がトップを務める上場企業では成し得なかったことだということは想像に難くない。

 

公器性の高い企業が持続可能性ある発展を遂げる時代

「ロングターム・オリエンテーション(以下、LO)」という言葉がある。「経営の長期志向性」「遠い将来まで考えた経営の意思決定・投資をする姿勢」を指すという言葉だ。カナダHECモントリオールのダニー・ミラーらが2006年にET&P誌に発表した論文で提唱したもので、日本では今を時めく経営学者、早稲田大学ビジネススクール准教授の入江章栄さんが広めたのだが、曰くファミリービジネスの方がこのLOを持ちやすいのだそうだ。

目先の利益を追うよりもお家の存続と繁栄の方が、プライオリティの高い行動規範となるからという道理にはそれ相応の納得感がもてる。さらに、LOを持った企業の方が社会問題への関心が高くなるようで、これも長い目で見て社会が良くならなければ、企業も持続性ある繁栄を享受できないからだと言われている。

公器性の高い企業が持続可能性ある発展をしていく時代となった。そう言い切りたい。ただ、もしここまで言うのがまだ乱暴なのだとしたら、あるいは、アメリカ流のコーポレート・ガバナンス理論が思ったほど上手く機能しないことが露呈し始めた。こうは言えるハズだ。

ROE(株主資本利益率)やROI(投資効率)といった指標を過度に重視する経営スタイルが尊ばれる時代は終焉に差し掛かり、一周回って海外の最新トレンドが、日本企業が古来持ってきた良さに近づいてきていることを感じる。今こそ、ファミリービジネス尊厳回復の時である。

 

では、この外部環境の変化を当事者たちはどう捉えているのだろうか。これを聞くのに最適な団体がある。中小企業の若手経営者や将来の経営者の集まりである日本青年会議所。その2018年度会頭を務める学校法人新潟総合学院理事長の池田祥護さんは、自らもファミリービジネスの後継者である。

後段では、池田会頭と100年経営研究機構代表理事の後藤俊夫さんと専務理事の藤村雄志さんが、ファミリービジネスの現在と未来について語り合う。

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